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印南敦史印南敦史  - ,,,  06:30 AM

大阪の小さな工具メーカーを成功に導いた「MPDP」理論とは?

大阪の小さな工具メーカーを成功に導いた「MPDP」理論とは?

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「ネジザウルス」の逆襲 累計250万丁の大ヒット工具は、なぜ売れ続けるのか』(髙崎充弘著、日本実業出版社)の著者は、大阪の「株式会社エンジニア」という会社の代表取締役。従業員30名の小さな会社ですがベンチャー企業ではなく、49歳のときに先代から会社を引き継いだのだといいます。

扱っているのは「ネジザウルス」という工具で、シリーズの累計販売数は250万丁に達しているのだとか。ふつう、工具は年間1万丁も売れれば大ヒットとされるそうなので、これは驚異的な数字といえそうです。

ネジザウルスはプライヤーという工具の一種です。(中略)ペンチやニッパーの親戚と考えていただくと、わかりやすいかもしれません。ただ、ネジザウルスがほかのプライヤーと違うのは、「つかむ」だけでなく「回す」動作にもすぐれている点です。先端部分に施された特殊な加工などによって、物をぐっとつかんで、その状態をキープしたまま、左右に回すことができるのです。(「はじめに」より)

つまり、そんな特徴を生かし、どんなネジでもはずしてしまえるわけで、それがヒットの要因だといえそうです。とはいえ、そこに至る過程に紆余曲折があっても当然。事実、苦労や失敗もあったようですが、ともあれ売り上げが伸びていく過程において、著者はある種の法則性に気づいたといいます。それを応用すれば、誰でも高い確度でヒット商品を生み出せるとも。その法則性が、本書の核である「MPDP理論」。

・マーケティング(Marketing)
・パテント(Patent)
・デザイン(Design)
・プロモーション(Promotion)
(「はじめに」より)

この理論があったからこそ、さまざまな障害を乗り越えられたというわけです。それぞれの要点を、第2章「ヒット商品はMPDP理論から生まれる」から引き出してみます。


M マーケティング(Marketing)


著者によれば、MPDPのなかでもっとも重要な部分がマーケティング。ヒット商品の卵を探し当てる作業なので、この段階で間違えると、その後の努力が無になることも。そこで、プロのスカウトによる目利きが要求されるわけです。

顧客へのインタビューからアンケート調査までマーケティングの手段も多種多様ですが、留意すべきは単なるお客様の声(VOC:Voice of Customer)ではなく、「声なき声」(SVOC:Silent Voice of Customer)をすくい上げることだと著者。つまり、水面下に潜む潜在ニーズを察知する必要があるのです。

そしてそのとき留意すべきは、「多くのお客様が望んでいる時点で、それはすでにニーズではない」ということ。つまりそれは、メーカーが実現して当然の問題点であり、実現したところで驚かれるようなことではないというわけです。その一方、少数意見は、ほとんどのお客様が気づいていないという意味で驚きがあるもの。つまりそれこそが、潜在するニーズだということです。

しかし、そもそも潜在しているのですから、そのニーズを察知しにくいのは当然の話。見過ごしてしまっても仕方がないのですが、そこを的確に見抜く人たちがいるのもまた事実。それに、おそらく潜在ニーズを的確につかむ方法はないだろうと著者も分析しています。しかしそれでも、努力と工夫次第で、それを直観する嗅覚なら磨くことが可能。大切なのは、「驚き」があるかどうか、という視点でお客様の声を検証してみることだといいます。

でも、ときにはお客様の声に盲従するような商品開発もまた、失敗の可能性を高めるもの。なぜなら、そこには「驚き」の発生する余地がないから。そういう意味で、つくり手側の志やこだわりをおろそかにしないプロダクトアウトの発想は、マーケティングに不可欠だと著者は記しています。(79ページより)


P パテント(Patent)


パテントは、いわゆる「特許」。マーケティングがスターの卵を探し当てる作業であるとすれば、パテントはその卵と契約を結ぶ段階です。将来性ある逸材を発掘しても、すでに他のプロダクションが水面下で交渉を進めていたかもしれない。あるいは、その卵がなんらかの個人的な問題を抱えている可能性もないとはいえません。つまり、あとから問題にならないよう、事前にきちんと調査をしておく必要があるのです。

とはいえ、ヒット商品とパテントとの間に直接的な因果関係を見出しにくいという人もいるはず。特に法務部門など知的財産権に関するスペシャリストがいる大企業とは異なり、そういう部門も人材も持たない中小企業では軽視されがち。しかしそれでも、ヒット商品にパテントは不可欠なのだと著者はいい切ります。理由は、パテントが商品の売れ行きに急ブレーキをかけるような不測の事態を未然に防いでくれるから。

パテントに興味がないからと特許の出願を怠ると、ふたつの問題が起こるそうです。まず考えられるのは、まったく同じ技術が他者によって先に開発され特許が登録されていたため、特許侵害の警告書が届くケース。そしてもうひとつは、模倣品が市場に出回るケース。そんなとき特許出願をしていなかったとしたら、いくら自社商品のオリジナリティーを主張しても、それを認める法的根拠はないということ。

これらふたつの可能性に共通するのは、ある日突然に訪れる災厄であるという点だといいます。不意打ちのようにヒット商品を奪い、経営を危機に陥れるのが、パテントを軽視した際に考えられるトラブルだというわけです。(85ページより)


D デザイン(Design)


ヒット商品を生み出すうえでデザインというプロセスが欠かせないのは、お客様が必ずしも機能や価格にだけ満足を求めているわけではないから。意識しているかどうかは別としても、ユーザーは商品を購入することによって共感や感動といった要素も手に入れたいと考えているということです。機能や価格を評価軸とする商品価値を「機能価値」と呼ぶのに対し、こうした商品価値は「感性価値」「情緒的価値」と呼ばれているそうです。

とはいえ開発資金が乏しい中小企業では、大企業のように洗練された商品デザインを実現することは困難。しかし著者は、ハンデを乗り越えるためにふたつの手段が有効だとしています。ひとつは、3Dプリンターの活用。事実、著者の会社においても、試作品の精度が大幅に上昇し、製作コストが抑えられ製作時間も短縮されたそうです。そんなこともあり、中小企業にとって3DプリンターはMPDP理論を実践するための強い味方だと著者はいい切ります。

もうひとつは、工業デザイナーの2段階活用。中小企業の場合、全工程を工業デザイナーに依頼するのは困難であるため、どのプロセスで協力を求めるべきか見極める必要があるということ。そこでまず、山にたとえるなら2合目でいくつかのルートを教えてもらい、そこから自社にふさわしいものをチョイスする。提示されたルートのなかには生産設備や加工外注先、納期、コスト、人材などあらゆる点で実現困難なものも含まれているはずなので、成功の可能性が高いものを選ぶということ。そして次は8合目。最終段階が近くなった時点で、デザインのブラッシュアップをはかるわけです。(89ページより)


P プロモーション(Promotion)


最終段階であるプロモーションは、MPDPのなかでもっともバリエーション豊富な要素。しかし必ずしも正解がないだけに、どのようなプロモーションが効果的なのか、手法にもセオリーはありません。商品の性格や想定する顧客層、経営者の個性、社風などによって、最適なプロモーションの方法は違ってくるということ。しかしそのぶん、中小企業にもチャンスは多いといいます。

ただ、いずれにしても「思いついたら、なんでもやってみる」という姿勢は大切ではないかと著者は記しています。少しでも注目される可能性があるのなら、仕事に関係のなさそうな勉強会などにも積極的に顔を出してみることが大切だという考え方。もちろん空振りに終わることもあるでしょうが、それでも思い切ってバットを振ってみる。なぜならバットを振らなければ、絶対にボールには当たらないからです。(96ページより)




本書の最大の特徴は、中小企業の視点に基づいているところにあるでしょう。マーケティング、パテント、デザイン、プロモーションが重要だという考え自体は決して斬新なものではありませんが、それを大企業とは異なる角度から捉えているからこそ、そこに新たな可能性が提示されるわけです。

実際には著者が自社内で体験したエピソードも紹介されているため、実践的価値も高いはず。さまざまな意味で、得るものが多い内容だといえます。


(印南敦史)

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