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松尾仁  - ,,,  09:00 PM

別府『混浴温泉世界』の10年の歴史から学ぶ、アートフェスがまちづくりに果たす役割。

別府『混浴温泉世界』の10年の歴史から学ぶ、アートフェスがまちづくりに果たす役割。

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日本有数の温泉地、大分県別府市で3年に一度開催されてきた現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』は、現在開催されている第3回で最終回を迎えます。ライフハッカー[日本版]の米田編集長が、書籍『混浴世界温泉 -場所とアートの魔術性』の編集を担当した縁もあり、本イベントの発起人で、別府を拠点に活動するアートNPO「BEPPU PROJECT」代表の山出淳也さんに、節目を迎えた今、改めて立ち上げの経緯やフェスティバルの変遷、今後の展開についてお話を伺いました。『混浴温泉世界』の10年とともに、アートフェスがまちづくりにおいてどのような役割を担うべきなのかを、5つのポイントとともに考察します。


山出淳也(やまいで・じゅんや)
1970年、大分県生まれ。2000年から、PS1インターナショナルスタジオプログラムでNYに滞在後、2002年から文化庁在外研修員としてパリに滞在。アーティストとして『台北ビエンナーレ』(台北市立美術館)、『GIFT OF HOPE』(東京都現代美術館)、『Exposition collective』(Palais de Tokyo)などの展覧会に出展。2005年にBEPPU PROJECTを立ち上げ、別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』の総合プロデュースを行う。


自らの「観たい」という好奇心から生まれたアートフェス


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BEPPU PROJECT代表、山出淳也さん。


10代の頃からアーティストとして活動していた山出淳也さん。大分県出身とはいえ、海外での生活が長かった彼が、別府で国際的なアートフェスティバルを開催しようと思ったきっかけは、パリで暮らしている頃にインターネットで読んだある記事でした。


山出淳也さん(以下、山出):別府ではホテル経営者が宿泊客向けの路地裏散策ガイドツアーを行っていて、それはたとえ参加者が1人でも催行しているという記事でした。団体客がメインの温泉街で個人向けのサービスを行っていることに衝撃を受けて、半信半疑ですぐに市役所に問い合わせたら本当に行われていたんです。別府が観光地としてのピークを過ぎていることはわかっていました。でも、きっと変わっていない魅力があるはずで、そんな街を海外のアーティストの友人たちが見たらどう思うんだろう、どんなインスピレーションを受けてどういう作品をつくるんだろうということが頭から離れなくなりました。それでアートフェスティバルを開催しようという考えに至ったんです。


point 01:最初の課題は、継続して文化財産を共有すること。


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第1回のメインビジュアル(左)は別府・鉄輪(かんなわ)地区の朝の景色。以降、第2回(右)は昼、第3回は夜の景色を使用している。アート作品は市街地だけでなく、鉄輪地区にも展示されている。


別府という街とアートがどのように交わるのかが見たかったという山出さんは、記事を読んでから約1年後、2004年の秋に帰国。アートフェスティバルを開催するという目標に向けて、BEPPU PROJECTを立ち上げ、2005年の春から準備活動を開始。2006年にはBEPPU PROJECTをNPO法人化して、2009年4月に第1回の『混浴温泉世界』を開催しました。しかし、当初は『混浴温泉世界』を継続して行うつもりはなかったのだと、山出さんは言います。


山出:実は、『混浴温泉世界』は1回で終わるはずでした。でも、会期中、作品の見回りのために展示会場のひとつである神社に行ったんです。すると、おばあさんが長い階段を登ろうとしていたので手をひいて、『混浴温泉世界』やアート作品の説明をしながら一緒に歩いたんですね。おばあさんは神社の隣りにある病院に入院されている方だったみたいなんですが、おばあさん曰く、病院の上から作品を見て、患者さん同士が「神社にあるあのきれいなものは何だろう」と話していたそうなんです。ようやく見に来ることができたと喜んでくださって、別れ際に「また来年もやるんでしょ? 生き甲斐が増えたわ、楽しみにしてるわね」と言われて。

『混浴温泉世界』を継続して開催するというビジョンは全くなかったんですが、このときに"継続"という言葉の意味が腑に落ちました。地域において継続することは、運営者とアーティストだけでなく、地域の人々が共有する文化財産のプラットフォームになっていくということ。元々、『混浴温泉世界』の理念は、肌の色も宗教も年齢も異なる人々がフェスティバルをきっかけに交わるということ、つまり多文化共生だったので、継続して開催するということもその一部だと考えるようになりました。


こうして『混浴温泉世界』は、準備期間を含めて10年間、3年に一度、計3回継続して開催することが決まりました。観光客を呼び込み、街に活気をもたらすためには、1回限りのお祭りで終わるのではなく、街の文化財産になるまで続けることが最初のポイントのようです。


point 02:フェスを行うことで、街の日常的な課題が見えてくる。


第1回(2009年)のイベントを経て、山出さん率いるBEPPU PROJECTに寄せられたのは「街歩きのためのマップはないのか?」「土地ならではの暮らしが体験できるような宿泊施設はないのか?」「外国人観光客に対するアナウンスはないのか?」などといった声。これはイベントに対してだけでなく、街に対して寄せられたともいえる課題です。そこで第2回(2012年)に向けては、イベントを開催するという目的と同時に、これら課題を解決するためのプロジェクトも進行していくことになります。


山出:第1回は開催すること自体が目的でした。それ以降は、会期期間中だけでなく、イベントの延長線上にある日常の課題を解決するためのプロジェクトを、多いときで年間200プロジェクト近く同時並行してきました。情報発信の形を模索することもそうですし、「せっかく大分に来てもらうのだからお土産も作ろう」とか。ひとつの事業を行うときに必要なことをイメージして、3年に1度の『混浴温泉世界』で、途中経過を報告していくような感覚ですね。さまざまな課題を解決するためのプロジェクトを、『混浴温泉世界』の運営費とは予算を別にして組み立てていく。

3年間かけて小さなプロジェクトをランニングさせていくので、『混浴温泉世界』が終わるとほとんどはスピンアウトします。たとえばお土産を作るプロジェクトは完全に部門として独立して、その中で経営がまわるような仕組みも生まれています。


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BEPPU PROJECTのお土産プロジェクトから生まれた「ザボン漬け」。


イベントやフェスティバルの企画は、往々にして会期中のコンテンツに焦点が当たりがちです。しかし重要なのは、それを行うことで見えて来る「街の日常的な課題」に向き合うこと。その課題に対する施策を検証するためにも、複数回、イベントを継続することが重要なのではないでしょうか。


point 03:顔の見える規模が、長く通ってくれるファンを生み出す。


第2回以降のイベントでは、フェスティバルの規模も重視したと山出さんは話します。大切にしたのは、運営側がお客様と向き合える距離感であるということ。


山出:ある場所に100人が一度に来てくれるのは嬉しいことですよね。それが1万人になっても10万人になってももちろん嬉しい。でもひとりのお客様が100回来てくれるような価値にこそ僕は感謝したいし、そういう姿勢であり続けたいと思っています。イメージとしては巨大なホテルではなく、20室程度の旅館。お客様ときちんと向き合えるサービスはどのようなものなのかを想像して、徹底したいと思っているんです。

別府の温泉は観光客にも地元の人々にも利用されています。特に女湯では、地元のおばあさんが若い観光客に「もっと長くお湯に浸からないと冷え性になるよ」と言っている風景が当たり前。では、地元の人はどこから来たのかというと、実はほかの地域から来た人が多くて、特に女性は家庭や金銭問題など負の要素を抱えて別府に逃げてきた人も多いんです。別府は歴史的にそんな人たちも等しく受け入れてきた街なんですね。関係性は温泉街ならではの裸の付き合いで深いですが、ある一定以上は踏み込まないという暗黙のルールがある。別府は母性を感じられる街なんです。いろんな人がゆるやかに共存する文化が培われてきたこの場所だからこそ、アートフェスティバルを開催することで、記憶が積み重なったり、新しい交流が生まれたり、何かが始まることを大切にしたいんです。


地域でアートフェスを行う目的は、アートに触れることで街に触れ、その場所のファンになってもらうこと。そのためには、数多くのお客さんを一度に呼び込むのではなく、街の魅力を十分に伝えられる規模で行うことが大事なのだと感じました。


point 04:終わりを告げるのは、毎日をフェスにするため。


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『混浴温泉世界2015』で開催中の「アートゲートクルーズ」では、
50年以上前に封鎖された地下街に展示された作品にも出会える(写真は作品設置前)。


現在開催中の第3回のテーマは「ライブ」。メインプログラムは、1日1〜2回開催、定員15名の街歩きツアー「アートゲートクルーズ」です。これは、今は使われていない建物の地下室や入り組んだ路地裏などを歩いて巡るなかで、参加者たちがアート作品と出会い、別府の歴史の一端にも触れられるという催し。他にも、週代わりで会場もパフォーマーも異なるダンスが繰り広げられる「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」や、デパート全体を会場に毎日違うパフォーマンスを観ることのできる「わくわく混浴デパートメント」などが催されています。


山出:今回が最終回だと決めていたのに、今、僕は終わらなければいいのにとも思っているんです。今回、僕たちが意識したのはディズニーランドの仕組み。入り口がどこかにあって、そこから街と出会っていくためのワンストップのサービスが提供されていくということ。そういう意味では、会期が終わってからが大事なんです。第1回はイベント開催をターゲットにしていたのが、2回目以降はイベントから派生した日常の課題に対する施策を報告するためのイベントになって、これからはそれを毎日ずっと続けるという在り方が望ましいんじゃないかと思っているんです。具体的なことは、これから考えていくんですけどね。


10年に渡って行われてきた『混浴温泉世界』は毎回好評で、経営的にも素晴らしい結果を残してきました。しかしながら終わりを告げるのは、3年に一度という枠組みを外すことで、日常的かつ永続的にまちづくりを考えていこうとする、山出さんの決意の現れなのではないでしょうか。


point 05:次の世代が育つと、それぞれの街が個性を持ち出す。


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国内外で活躍するダンサーたちが商店街などでパフォーマンスをする「ベップ・秘密のナイトダンスツアー」。


2009年に第1回の『混浴温泉世界』を開催して以来、アートを切り口とした別府のまちづくりを担うエンジンのような存在であり続けているBEPPU PROJECT。昨年には、大分県北東部にある国東半島で行われた『国東半島芸術祭』も手がけ、アート作品を見るために地域内を移動することで地域の魅力に出会えるというスタイルはひとつのモデルとして確立しました。しかし、非日常を日常的に続けて行くディズニーランドのような仕組みを作るためには、BEPPU PROJECTの在り方も変えていく必要があると山出さんは話します。


山出:第1回開催時には、別府で現代アートをやっている団体が他になかったから、僕たちが目立っていたのは当然のこと。でも、『混浴温泉世界』をはじめ我々が手がけているプロジェクトには、地元にある立命館アジア太平洋大学の学生など若い世代も参加してくれていますし、ここ数年で、徐々にほかのプレーヤーも育ちつつあります。大分への移住者も増えているようです。地方にとって今後重要になるのはピラミッドをつくって頂点を高めていくことではなく、逆ピラミッド型のデザイン。いろいろな人々が関わりながらさまざまなプロジェクトを進めて、僕たちが必要とされればしっかりとサポートをして押し出していくことが大切だと思っています。


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元ストリップ劇場を会場にしたお化け屋敷「永久別府劇場・恐怖の館」で
第2期を担当したパフォーマンスグループ・MuDA。


山出:最近はアートを切り口にしたまちづくりの事例も多いですが、はっきり言ってアートは一切、街の抱える問題を解決しません。むしろ物議を醸し出すなど、問題を起こすばかり。じゃあ、アートの持つ意義は何なのかというと、アートと向き合うひとりひとりが今までと違うものの見方で考えることを許される場であることなんです。それぞれ違う考え方が許されて、違うことにこそ価値がある。異なる価値が共存することでいろんな可能性が生まれていく場を生み出すためのアートであり、それが街の個性を表現することにつながればいいと思っています。


ご自身の好奇心から始まった『混浴世界温泉』が、形を少しずつ変えながら継続し、すべてがゆるやかにつながりながら新しい物事を生み出してきた過程を聞いていると、その在り方自体がアートのようにも感じられます。そして、世の中には数多くのアーティストが存在するように、アートフェスを運営する次の担い手が育つことも大事なこと。あらゆる地方都市がまちづくりに力を注いでいる今、アートが個性を表現するための手段であるように、それぞれの都市がそれぞれ違う個性の表現手段を選ぶことが大切なのだと感じました。その道筋を築いたことも、『混浴世界温泉』の功績のひとつではないでしょうか。


9月27日まで開催されている『混浴温泉世界2015』で3回シリーズのアートフェスティバルは一区切りですが、山出さんが話してくれたように今後も形を変えてBEPPU PROJECTの活動は続きます。次はどのような形で、別府の魅力を表現してくれるのか楽しみです。


(編集・取材/松尾 仁 文/宗円明子)

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    香川博人

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