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松尾仁

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 - ,,,,,,,  09:00 AM

落語の新しい道を切り開く、立川志の春さんの挑戦

落語の新しい道を切り開く、立川志の春さんの挑戦

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以前「編集長インタビュー」にもご登場いただいた立川志の春さんは、イェール大卒、元三井物産勤務という異色の経歴を持つ落語家。留学経験を生かした英語落語でも知られています。

彼がシンガポールで定期的に行っている「志の春英語らくご」は今年で4年目。そのサポートを行っているのが先日ご紹介させていただいた女性起業家・齋藤真帆さん率いるVivid Creationsです。「志の春英語らくご」が生まれ、現在に至るまでのお話を齋藤さんと、定期公演の運営責任者である小野晴之さんに伺いました。


英語落語の可能性が見えた初公演


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立川志の春さんと齋藤真帆さんが出会ったのは2010年のこと。Vivid Creationsが立川志の輔師匠のシンガポール公演の運営をサポートした際に、付き人として来ていたのが志の春さんでした。当時、志の春さんは落語の階級でいう「前座」。志の春さんが師匠をサポートする合間をぬって、齋藤さんは志の春さんの経歴を聞く機会を得たそうです。


齋藤真帆さん(以下、齋藤):話をして、彼がアメリカの名門大学を卒業し、大手商社に勤めていたこと、志の輔師匠の高座を見て落語家を志すようになったことを初めて聞きました。当時私は、日本の素晴らしい文化をシンガポールに伝えようと起業してすぐの頃。師匠の公演はシンガポール在住の日本人に向けたものだったので、師匠の公演をさらに発展させ、ローカル(シンガポールの地元)の方々に英語で落語の魅力を伝えるための手段を探していたんです。それで志の春さんに「もしかして英語落語もできますか?」と聞いたら、「できなくはないと思いますが、今は前座という身分ですし、二つ目(落語の階級)に上がることが最優先です。ただ興味はあります」と答えてくださって。「でしたら、昇進した暁にはぜひシンガポールで英語落語をやってください」とお願いしたんです。

それから1年後、志の春さんは二つ目に昇進。齋藤さんはこの知らせを受けてすぐ、その年の夏に初のシンガポール公演を実現させました。このときから公演の運営責任者として「志の春英語らくご」に携わってきたのが、Vivid Creationsの小野晴之さん。初回は日本食レストランや語学学校、ショッピングモールのオープンスペースや日系の美容室を会場に、日本語と英語の両方の公演を組んだのだそうです。

小野晴之さん(以下、小野):予算がない中、まずは公演が出来そうな場所を当たって、武者修行という形で様々な場所でトライアル公演をさせていただきました。本来ならプロの落語家に公演をお願いできないような場所で、宿泊もホテルではなく会社所有のゲストルーム。シンガポールに落語の魅力を伝えたいという我々の想いに賛同してくださったからこそ組めた初公演でした。そんななかで感動的だったのが語学学校での公演。日本伝統芸能でローカルの方々が笑うのか、面白いと思ってもらえるのかとドキドキしていたのですが、その公演でお客様が大爆笑していたんです。Vivid Creationsが目指す、日本のユニークな文化を海外に伝えるということは、まさにこういうことだと思いました。

齋藤:以前、他の落語家さんの英語落語も観たことがあったんですが、志の春さんの英語落語は特別だと思いました。演目をご自身で翻訳されていますし、公演の前後にはお客様と英語でコミュニケーションをとって、落語という伝統芸能の歴史や文化背景までもご自身の言葉で説明できる。志の春さんの英語落語なら、ただ英訳した噺を伝えるということではなく、受け継がれてきた日本の文化まできちんとシンガポールの方々に伝えることができると思ったんです。これはもっとたくさんの方々に知っていただきたいと、年に2回、定期的に公演を行うことに決めました。


ローカルと向き合った、志の春さんならではのネタ探し


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通常の舞台ではなく、日本食レストランや語学学校などでも公演を重ねた初回の「志の春英語らくご」。


こうして始まった「志の春英語らくご」は回を重ねるごとに、運営側はもちろん、志の春さんにもさまざまな気づきをもたらします。大きな転機は2年目、「インターナショナルストーリーテリングフェスティバル」という世界各国の話し手が集まるイベントに、志の春さんが出演した際のこと。各国の語り手と出会い、話すことで志の春さんの意識に変化が生まれたようです。

齋藤:他国の話し手は基本的には三人称で語るんですが、落語は複数の登場人物に成り代わって一人称で、しかも扇子と手拭いという限られた道具を使って話します。「日本にこういう伝統芸能があるとは知らなかった、Rakugoは大変興味深いアートパフォーマンスだ!」と他の登壇者からも良い評価をいただいたと仰っていました。これをきっかけに志の春さんご自身も英語で日本の文化を伝えることに強く可能性を感じたようで、英語落語に対してある種の使命感も芽生え始めたようです。

3年目からは、志の春さんの希望で公演前にローカルなスポットを巡るようになります。これはローカルの方が親しみを持てるネタを探し、演目の導入部である「まくら」に取り入れるため。

小野:最新の公演で話したのは、リトルインディアの床屋で散髪をしたこと。インド文化圏の床屋は繁盛していることを伝えるために、切った客の髪を掃除せずそのまま放置します。そのため、一番髪が落ちている床屋を選んだという話をされていて、会場は笑いに包まれていました。また、シンガポール独特の訛りのある英語・シングリッシュを勉強して取り入れていることも最近の傾向ですね。志の春さんがシンガポールを積極的に知ろうとしている姿勢が伝わるので、お客様との距離もより近づいているように感じています。


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最新の公演前に、リトルインディアの床屋に入り、散髪をしている様子。


また、これまでは「転失気」や「動物園」など笑いの要素が強い演目で会場の笑いを誘っていた志の春さんですが、最近の公演では初めて古典の人情話「芝浜」を噺しました。これも彼にとっては大きな挑戦だったようです。

小野:初めての人情話、しかも立川談志師匠の十八番をやられるということで、志の春さんも内心緊張していたようです。結果、演目終了後に会場は大きな拍手に包まれました。この公演を経て、志の春さんは人間の心の機微まで英語で表現できる、とても稀有な落語家さんなのだなと改めて感じました。


シンガポールからアジア、欧米に。日本の伝統文化を世界に伝える


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回を重ねるごとに参加者が増え、今では安定して200人以上が来場するようになったという「志の春英語」。最近は海外メディアからの問い合わせもあるようですが、今後はどのような展開を考えているのでしょうか。

齋藤:志の春さんも手応えを感じていらっしゃるので、シンガポールの次は香港、マレーシアでの公演、ゆくゆくは欧米でも挑戦してみたいと話しています。けれど、無理はせずに各国での公演ひとつひとつを大切に、丁寧にやりたいという思いはVivid Creationsと共通したもの。少しずつレベルアップしながら進めていきたいと思っています。

小野:2020年には東京オリンピックもありますし、伝統芸能である落語を外国の方に英語で伝えられる代表のような存在にも、志の春さんならきっとなり得るのではないかと思います。

落語を英語で噺すだけでなく、シンガポールという土地や人々に向き合ってその特性を理解し、ローカルの人々に伝わるような形でその魅力を伝えている志の春さん。彼の活動によって、今まさに、「英語落語」という新しい伝統芸能のジャンルが生まれているのかもしれません。


(聞き手/松尾仁、文/宗円明子)

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