• GIZMODO
  • DIGIDAY
  • gene
  • cafeglobe
  • MYLOHAS
  • Glitty
  • machi-ya
  • roomie
  • GIZMODO
  • DIGIDAY
  • gene
  • cafeglobe
  • MYLOHAS
  • Glitty
  • machi-ya
  • roomie

鳥本健太|アートプロデューサー

鳥本健太|アートプロデューサー

 - ,,,,,,  09:00 AM

中国で1億回再生された男。日中の潤滑油、山下智博:成り行き任せの海外アート起業記~第3回

中国で1億回再生された男。日中の潤滑油、山下智博:成り行き任せの海外アート起業記~第3回

shanghai_yamashita13.jpg


今回はオーソドックスな美術の表現とは違う「ネット動画」というフィールドで表現活動を行い、反日の向かい風の中、中国のネットユーザーに絶大な支持を受けている山下智博と、彼のまわりで起きている面白い現象を紹介します。



中国ネット動画うp主の第一人者。ジャニーズの山Pに次いで、中国で二番目に有名な"山下"


日本の皆さんでご存知の方はあまり多くないかもしれませんが、私が代表を勤める「office339」でマネージメントしているアーティストの山下智博は、いま中国の若いネットユーザーの間で一番ホットな日本人と言われています。


shanghai_yamashita15.jpg


山下智博、アラサー独身。7:3分けに色眼鏡。所属は一応上海大学美術学院の大学院生で、「日中の若者文化交流」をキーワードに研究・活動しています。

2014年のクリスマスから、日本の情報を発信するバラエティ番組「紳士大概一分钟(紳士の大体一分間)」を中国の動画サイトに毎日投稿をし続けたところ、視聴数がドンドン伸びて、開始から5ヶ月ほどで総再生回数がなんと1億回を超えました。現在も一日100万回前後の再生回数を記録し続けています。

百度(バイドゥ)という中国の検索サイトで「山下」と検索してみると、ジャニーズの山Pこと山下智久さんの次に出て来てしまったり、「あなたは山下智久と山下智博どっちが好き?」という掲示板サイトが勝手に立ち上がったり、さらには「山下智久の弟なんじゃないか?」とかいう噂が立ったりしてます。ジャニーズの山下さん、本当にごめんなさい。


"お人形"とのコスプレ動画が話題に


なぜ彼が中国でこれだけ知られているのでしょうか?

彼は北海道小樽市出身。大阪芸術大学芸術計画学科を卒業後、札幌の団体職員として文化関連のイベントの運営などに携わる傍ら、自身でも表現活動をしていました。

いろいろと縁があり、2012年に中国・上海に意気揚々と移住したのですが、当初は言葉もしゃべれず、自分の居場所も見つからず、部屋に引きこもって悶々と日本のアニメを見続ける、ダメダメな日々を過ごしていました。

そんな彼の心の隙間を埋めたのは、ビニール製のお世辞にもカワイイとは言えない人形でした。「鳥本さん、僕この子と同棲します!」と写真が送られて来た時は、正直何て言葉をかけてあげたらいいか分かりませんでした。彼はその人形を「薇薇(ウェイウェイ)」と命名し、上海の大型コミケに2人でコスプレをしに行くというパフォーマンスを敢行、その様子を中国版ニコニコ動画ともいわれる「ビリビリ動画」に投稿しました。当時も中国国内の反日感情は強く、どういったバッシングをされるか不安でしたが、蓋を開けてみると・・・


shanghai_yamashita.jpg


「直視できない!」

「狂ってやがるwww」

「日本から本物のヘンタイが来た!」

「お巡りさん、この人です!」


などなど、沢山の暖かい(?)コメントが寄せられました。動画は23万回再生を記録、サイト内の総合ランキング2位になったりもして、多くのネットユーザーに衝撃を与え、いろいろな意味で中国のネットコミュニティに迎え入れられました。


求められる"フール"ジャパン


中国での、アニメをはじめとする日本のポップカルチャーの盛り上がりは皆さんも何となくご存知かと思いますが、最近ではコミケが乱立しています。あるサイトの書き込みを見てみると、2015年6月の1カ月間だけで、全37都市で42個の大小様々なコミケが予定されているほどです。

前述の「ビリビリ動画」も、日本文化を愛する中国の若者が集まる親日のサイトで、「歌ってみた」、「踊ってみた」、「ゲーム実況」、「MAD」など日本でも馴染み深いコンテンツが日々更新され、今では中国国内でも無視できないほど大きなサイトに成長しています。


shanghai_yamashita2.jpg

『となりのトトロ』のコスプレ


ここで一つ気になることがあります。それはここまで大きなブームになっているにも関わらず、そのコミュニティの中で目立った日本人の姿がないということでした。このブームは日本のポップカルチャーを愛する中国の若者たちが、見よう見まねで独自に発展させて来たのです。

そんなコミュニティに、偶然にも日本人として初めて自ら入って行ったのが山下智博でした。そんな彼を珍しがった中国の若者たちは、SNSを通じてここぞとばかりに日本の学校生活やアニメ、恋愛や旅行について様々な質問を投げかけ、それに答えるという形でコミュニケーションを深めていきました。


4.cosplay(2).jpg

『千と千尋の神隠し』のコスプレ


この当時の山下智博の微博のフォロワーは2万人。日本でここまで人気者になったことがなかった彼は「鳥本さん、中国最高です! やっぱ中国のみんなもおバカな日本人を求めてたんです! 中国に必要なのは"クールジャパン"じゃなく"フールジャパン"なんですよ!」と息を荒げ、ネタ系のコスプレやふざけた動画を作って中国の若者たちと交流を深めていきました。


5.cosplay.jpg

『名探偵コナン』のコスプレ


すると予想に反して(?)彼のフールな動画やアクションは少しずつ受け入れられ、いつの間にか山下老師(老師=中国語で先生の意味)と親しまれるようになり、彼の言う"フールジャパン"は中国の若者の心をつかみ、惹きつけていきました。


shanghai_yamashita3.jpg

ピカチュウに乗るピカチュウ


初の連続ドラマ「日本屌丝(リーベンディアオス)」


山下智博が、コミケなどでサインを求められるようになったり、弊社にファンレターなどが届き出したりと、にわかに人気者になり始めた2013年の冬頃、当時日本では「あまちゃん」が話題になっていました。中国にいた私たちも「あまちゃんヤバイよね~、面白いよね~」なんて話していました。

また、微电影というショートムービー形式の動画コンテンツが中国で主流になっていて、そろそろなにか作品を作ってみたいという思いもあったので、「あまちゃんみたいな連ドラを作ってみよう!」と、経験ゼロにも関わらず無謀にも連ドラ制作に手を出すことに。


8.RIBENDIAOSI.jpg


タイトルは「日本屌丝」。屌丝(ディアオス)とは、外見が悪く、お金もコネもなくお先真っ暗なイケてない若者を指す中国のネットスラングです。

日本人屌丝の山下智博と、中国の屌丝 薇薇の出会いから同棲生活を描く、半分実話で半分フィクションという、明らかに世間の需要を無視した甘酸っぱいラブコメディ。

キャストもスタッフも一部を除きほぼ素人、ドラマなんて作ったこともない山下智博が脚本・監督・主演を務め、さらには主題歌の作詞・作曲をして自分で歌っちゃうという、まさに無理矢理・勢い任せで制作を進めましたが、多くの方にご協力いただきなんとか完成させました。



ちょっと背伸びをして、上海の一等地にあるクラブを貸切って「日本屌丝」の制作発表会を開きました。沢山のファンの子たちが集まってくれて非常に盛り上がったのですが、そこにビリビリ動画の人も来ており、作品を気に入ってくれたことから、なんとビリビリ動画独占配信という形でスポンサーになっていただきました。


shanghai_yamashita5.jpg

製作発表会の様子


結果、全10話で500万回再生というヒットを飛ばし、山下智博は一躍時の人に。「HENTAI日本人」の地位を確固たるものにしました。中国でもHENTAIの言葉には称賛の意味があります。果たして称賛の意味合いで使われていたのかは分かりませんが、作品自体もファンの間で原作を元にしたマンガが描かれるなど二次創作が生まれたり、主題歌が勝手に中国のカラオケボックスに入っていたりと、広がりを見せています。


shanghai_yamashita6.jpg

ドラマ本編に出演する筆者


ちなみに私はプロデューサーという肩書きでクレジットに載っていて、ドラマ本編に「運動音痴なファラオの神」という意味不明な役でちょこっとだけ登場しています。


インターネット鎖国状態の中国の可能性


中国ではネットの規制が厳しく、国外のメジャーなサービスが遮断されています。YouTubeが見られません。ニコニコ動画も見られません。TwitterもFacebookもInstagramもLINEも使えません。世界の情報が遮断されている、唯一の大国です。インターネットにおいては鎖国状態と言っても過言ではないと思います。

一般的にデメリットとしてしか見られない部分ですが、日本が鎖国時代に独自の文化を育んだように、中国もいま独自の巨大なネットカルチャーが生まれています。そして鎖国しているが故に、外からの情報・文化に対してみんなアンテナを張っているし、一度引っかかると母数が多い分(中国のネット人口は6.5億人)、広がりも早いのです。


shanghai_yamashita7.jpg

およそ1分間の中で、日本の面白い商品や旅行地、流行や若者文化などを紹介する、ちょっと紳士な娯楽番組。


中国ではYouTubeのような、圧倒的なシェアを持つ動画サイトが存在せず、さまざまなプレイヤーがしのぎを削る群雄割拠の状況です。そのため、現在毎日更新している「紳士大概一分钟(紳士の大体一分間)」では、約10の大手プラットフォームと提携して同時配信を行っています。

定期的に再生回数のチェックやファンの皆さんからのフィードバック、コンテンツの方向性などを考える打ち合わせを行い、PDCAを繰り返してきました。


shanghai_yamashita8.jpg

曜日によって異なるトピックを紹介


ある統計によると、ここ数ヶ月はあらゆる日本関係の微博(企業、公的機関、芸能人、個人)のなかで、山下智博のアカウントが一番伸び率が高いそうです。


山下コンテンツ・SNS
動画コンテンツ総再生回数 約1億回
動画チャンネル登録数 約34万人
微博(中国版Twitter)フォロワー 約22万人
公式WeChat (中国版LINE)フォロワー 約12万人


shanghai_yamashita9.jpg

番組の最後には、その日のトピックにまつわる日本語のワンフレーズも学べる。


ビジネス的な側面でいうと、もともと収益はあまり考えずにやって来ましたが、動画再生回数が5000万を超えたあたりからメディアとして認知されるようになり、「広告を出したい」という企業さんから、せきを切ったようにたくさんの問い合わせが来るようになりました。

今のところ90%以上が中国企業ですが、広告以外にも中国人の日本へのインバウンド関連のプロジェクトや、山下智博や日本屌丝のIPを活用したスマホゲームの企画など、いろいろとお声がけをいただいいています。


日中の潤滑油(ローション)として、両国間をヌルヌルさせる


よく国際交流の場では「◯◯の架け橋」と表現されますが、山下智博が目指しているのは「日中の潤滑油(ローション)」になること。そのまま交わるとギスギスして痛いモノ同士を、潤滑油によってヌルヌルさせてお互いを気持よくさせたいそうです。

ギャグのように聞こえますが、マジメな話、ここに日中の次世代の関係構築へのヒントが隠されているように思います。

歴史・政治問題で、日中間はギクシャクした関係がずっと続いてきました。おそらくこれからも解決することはないでしょう。

しかし、対中国、対日本といったように一元的に見るのではなく、サブカル、ネット、笑い、若者文化などなどさまざまな要素を、正面からではなく斜め上からアプローチしていくことで、全く別の顔が見えてきます。

そこに経済原理や政治思想ではない、軽やかな「ユーモア」を差しこむだけで、驚くほどスムーズにモノゴトが進むことがあります。よくわからないけど面白いから許せちゃう、みたいな。

あとネットで面白いのは、マスにアプローチしながらも中国の若者と直接つながって、コミュニケーションを取れること。

ちょっと思いついたことを微博でファンに問いかけると、あっという間に500件以上のコメントが帰ってきたり。


shanghai_yamashita10.png

微博でのファンの反応


先日ファンの皆さんにアンケートを呼びかけたところ、1万2000件以上の回答が返ってきました。アンケートで1万って相当な数です...。

彼の周りで起きている現象を見ていると、コミュニケーションのあり方が新しいフェーズに入っていることを実感します。


日本人の視線をもっと中国に!


山下智博には、中国のコンテンツを日本にもっと紹介していきたいという目標があります。私も日々実感するところですが、中国の若者は日本の文化を知りたがってるのに、日本人は中国にほとんど関心がないように見受けられます。

一つの要因としては、中国には面白いコンテンツがない(見えづらい)からだと思います。このアンバランスを何とかしたい。

彼がメディアのような役割を果たすようになってきたため、おかげさまで中国の面白い人材や情報が集まってくるようになりました。今後は中国の面白いクリエイターをもっと発掘して、一緒にコンテンツを作り上げ、それを日本にも発信するプラットフォームのような存在になれればいいなと考えています。

現状だとどうしても情報の流れが一方通行になりがちですが、日本の人たちも中国のコンテンツを楽しむようになって初めて、本当の意味での文化交流と言えるのかもしれません。


はたしてこれはアートなのか?


このような活動、私はめちゃくちゃ面白いし、意義があると思って進めているのですが、アート関係の方々に話すと、「でもそれって別にアートじゃないよね」と言われることがあります。はい、確かにいわゆる「アート活動」では無いかもしれません。


shanghai_yamashita11.jpg

現在製作中のスピンオフ映画『日本屌丝 外伝』のキャスト


ただ、いま彼の周りで起きている現象自体は「価値観の転換」という面から見て、アートととらえることも出来るのではないか?とも思っています。なので、後から振り返って「あの現象はアートだった」と言ってみたいなと。

まあ正直な所、私自身面白いからやっているのであって、「アートかアートでないか」という議論自体どちらでも良かったりもするのですが。


shanghai_yamashita12.jpg

『日本屌丝 外伝』の撮影風景。6月中旬配信予定。


ちなみに私は、山下智博の日中の潤滑油としての活動が、ずっと後になってから、両国間の平和に寄与したという功績として讃えられたりなんかして、間違ってノーベル平和賞でも貰ってくれないかな~、なんて冗談のようなことを本気で考えています。


鳥本健太 KENTA TORIMOTO
1980年生まれ、北海道新得町出身。アートプロデューサー。上海を拠点とするアートマネージメント事務所「Office339」の代表。現代アートを軸に様々な領域を横断し文化的な価値を創造する企画をアジア各地でプロデュースしている。近年のプロジェクトとしては、中国のオタク層に話題沸騰中の連続ドラマ「日本屌丝」のプロデュース、上海環球金融中心5周年記念アートプロジェクト「滤镜 FILTER THE PUBLIC」総合ディレクションなど。

MORE FROM LIFEHACKER

powered by

Kotaku

Recommended

© mediagene Inc.