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佐々木博|マルチハビテーター

佐々木博|マルチハビテーター

 - ,,  07:00 PM

シェアハウスでの生活から、多拠点生活への挑戦

シェアハウスでの生活から、多拠点生活への挑戦

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マルチハビテーション、すなわち多拠点居住(生活)とは、複数の生活拠点を持つことです。ここでは、定住や移住ではなく、半定住として、都市と地方、国内と海外など、複数拠点で働いて暮らす試みを称しています。

この連載では、複数の拠点を持って生活するマルチハビテーションや、多世代、多世帯で共同生活をするシェア・コミュニティを通じた、新しい暮らし方や働き方について、実践的に挑戦していることを紹介していきます。そして、その中で直面している課題や解決していくためのハックなどを、執筆していきたいと思います。

まずは、簡単に自己紹介を兼ねて、こうした活動を行うに至った経緯を書いておきます。


時間、空間、人間の3つの「間」を解放する生き方


僕はITが黎明期だった頃より、NHK教育テレビにてITメディアに関する番組講師を12年ほど行ってきました。IT技術によって、1人でも多くの人が、自分の「好き」といった感情を大切に、創造的に楽しく豊かに暮らすためにはどうあるべきか? 日本全国、多くの人を取材しながら、コンピューターやネットワーク社会の可能性を探求してきました。

この経験を通じて理解したことは、好きなことを素直に実践して「身の丈」に合った生活をしている人ほど、ネットワーク社会の恩恵を受けている、ということ。

インターネットは、たくさんの人に物事を周知させる技術であるだけでなく、オープンなコミュニケーションを通じて、自分らしくいることを学ぶ教材なのだと思うに至りました。

本当に自分に素直で、身の丈に合った生き方や裏表のない行動ができている人は、他人からも共感や信頼を得られます。また、情報化社会では、どれだけのことを知ってるか? ということ以上に、自ら実践している人の方が価値が高く、共感を集めやすいのも特徴です。

そうした行動にともなった情報発信は、成功体験ばかりではなく失敗体験などもシェアするなど、「自己顕示」ではない「自己開示」となる内容であることも重要です。

多くの人の共感を集めたり、信頼されることによって得られるネットワーク社会の恩恵を、ここではより能動的で自由な暮らし方、働き方の獲得とします。言い換えれば、インターネットを通じて、どうすれば、時間、空間、人間(関係)といった3つの「間」から自由になれるか? そんな生き様を模索してきたんだと思います。


IT社会のジレンマ


しかし僕もふくめて、多くの人は自分の時間、空間、人間関係などを自由にすることができません。インターネットを活用するほどに、人間関係に悩んでしまったり、1人の作業や仕事量が増えて、常に仕事に追われてしまうことも珍しくありません。

そこで、「身の丈に素直に生きる」「誰かと積極的に分かち合う」といったインターネット社会での原則を通じて共感と信頼を得るためにはどうしたらいいか? 勝ち得た先に何があるのか? それを実生活で実践的に確かめようと思い、行動を始めたのが、約4年前に始めた、シェア・コミュニティ生活です。


64人でのシェア・コミュニティ生活


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原宿THE SHARE。カフェ、コワーキング、住居の複合型シェアプレイス。


原宿にあるTHE SHAREという複合型シェア居住施設には、10代から50代までの多種多様な職業や価値観の人が64人で共同生活しています。

トイレやお風呂。キッチンなどのハードウェアだけでなく、アイデアや楽しさといった感情に至るまで、大人数の都市型生活共同体では、何をどこまで共有(シェア)できるのか? 所有するのではなく共有することで、何が生まれるか?

何かの競技に参加しているような気持ちで、この実験的生活を楽しんできました。ここでの学びについても、機会を改めて書いていきたいと思います。

共同生活におけるシェア体験からは本当に多くの学びをもらいました。しかし、良い側面ばかりではなく、共同生活を伴ったコミュニティに属することは、閉鎖感や戸惑いも多くあります。

環境やハード的なものから、考え方やマネジメントのルールなど、シェア・コミュニティで快適に暮らすためには、まだまだアップデートが必要なものがたくさんあります。

ただ、コミュニティがある意味不自由さを伴い、閉鎖的になってしまうのは、仕方がないと思います。どんな場所や関係でも1つの所にずっといると、新鮮さも失われます。物理的な空間が伴う分、インターネットのように、出入り自由なオープンで分散的なコミュニティになるには、まだまだ試行錯誤が必要になります。

こうしてインターネットコミュニティから理解してきたことと、シェア・コミュニティ生活を通じた葛藤や学びは、多くの共通する部分があり、課題や仮説が浮かび上がってきました。そうした学びから、次なる挑戦テーマとして生まれたのが「マルチハビテーション(多地域居住生活)」です。


マルチハビテーションへの挑戦


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熊本県阿蘇。車で1時間ほど走ると、こうした景色に出会えるのは、地方暮らしの良い所。


新しいシェア・コミュニティのあり方を考えた時、お互いが助け合うためにそこに居止まるのではなく、そこに属するコミュニティがあるからこそ、もっと自由に安心して、多くのコミュニティに属することができます。そして、それを実践するための仕組みやスキルや作法を見出すことが大切なのだと思います。

言い換えれば、依存ではなく自立のためのコミュニティ体験であること。協調、協働のスキルというのは、自己犠牲的でなく、もっと自律的で、それぞれがオープンに自由になるためのスキルともいえます。

そのために必要な信頼や共感を、飲み会やボランティアで獲得するのではなく、それぞれの「らしいスタイル」で無理なく見つけることが、コミュニティの恩恵を受けつつ、自分らしく生きていく学びなのだと思います。


シェア・コミュニティからマルチハビテーションへ


そうしたマインドセットだけでなく、シェア・コミュニティとマルチハビテーションには、とても連続性があります。わかりやすく言えば、長期的に別の拠点にいる間は、いつも自分が生活している無人の拠点を「所有」していても生かされません。観葉植物も枯れてしまうでしょう。買ったばかりの食材も捨てるしかありません。

マルチハビテーションを実現するためには、複数の拠点を持つことではなくて、複数のシェアコミュニティに属するスキルを身につけることとも言えます。


マルチハビテーションに必要な5つの工夫


とはいえ、多拠点に暮らすためには、現実的には、経済的な面もふくめて、いくつか乗り越えなければならないハードルがあります。最後に、こうした課題に対して、どのようなアプローチがあるのかを分類して整理しておきます。


1)居住ハック

ビジネスホテルを泊まり歩くのでは、ただの出張族になります。やはり、疲れを休め、地域や居住者などコミュニティとのつながりを持ち、「生活」を持続的にするということ。そのために、どのような場所でどんな居住がスタイルを選ぶのが良いか? を考え、マルチハビテーションに適した居住スタイルを見出す必要があります。

たとえば、前述のシェアハウスやシェア・コミュニティを一拠点にする方法や、Airbnbを運用している友人に部屋を提供するなど、それぞれの拠点を使っていない時間の最適化を図るなど、拠点維持費を抑える工夫も必要です。

また、郵便物や必要なものをどこに保管すべきか? そうした環境設計や居住空間に対する考え方も、マルチハビテーションに向けたあり方として模索する必要があります。


2)移動ハック

移動コストの低減や効率化を図ること。そして、なるべく体にも負担のかからない移動をするために、どのような手段で移動するかを検討します。

たとえば、LCCの効果的な使い方として、移動コストの安い時期を狙ってアポイントやミーティングのスケジュールを組むなど、移動手段の合理性を優先した年間計画を立てる方法も考えられます。

拠点選びも、空港や駅などからのアクセスの良さを前提とした選び方が大切です。単純な距離や所要時間だけでは見えてこない、利便性や快適性を考慮していくことも、マルチハビテーションを企む上で大切ですし、楽しい作業とも言えるでしょう。

また、移動手段として、僕の場合は、地方拠点に自家用車を置いて、東京ではTimes Car PLUSのようなカーシェアリングを活用しています。車も車中泊を前提とした選び方をしているので、最悪の場合でも、道の駅やパーキングエリアで寝泊まりしながら、移動できるようにしています。


3)仕事ハック

もっとも重要なことは、働き方をどう捉えるか? ということ。テレワークや移住創業なども増えてきていますが、物理的に人と会う価値は変わりません。

しかし、マルチハビテーションに適した働き方や職能があると思います。言い換えれば、どんな暮らしがしたいか? に合わせて職業や仕事を選ぶという視点も重要になります。

もっとも親和性が高いのがインターネットやパソコン、スマートフォンを活用した、モバイルワークのスキルだと思います。マルチハビテーションを思考実験と捉えて、そうした生活をするならば、必要なスキルを準備したり、どんなスキルが必要かを考えてみることからも、これからの時代を生きるための大きなヒントがあると言えるでしょう。


4)交流ハック

モバイルワークスキルと同様に、工夫が必要になるのは、人との交流や接し方です。移動が伴うと、関係が疎遠になってしまう面もありますが、持続的な関係や交流を続けるために、パブリックな世界で自分の情報を発信するソーシャルメディアをうまく活用することも大切なスキルです。

コミュニティに居止まることでは、よく見えなかった人間関係も、移動することで、より積極的に関わりたくなることもあると思います。
大切なことは、移動をすることで信頼関係や価値を下げるのではなく、いかに上げることができるか? です。


5)制度ハック

マルチハビテーションは地方自治体でも、地域振興計画にふくまれてくるようになりました。定住・移住促進ではなく、二地域居住やお試し移住のような仕組みやテレワーク支援によって、往来を増やそうとする取り組みです。しかし、実際に多拠点で暮らそうとすると、制度が追いついていないがためにぶつかる課題もあります。

たとえば子どもを保育園に入れようとすると、移動するたびに住民票をそこに移さなければならなかったりという、手続き上の問題が出てきます。住基ネットなどにより、コンビニで住民票を取り出したりといったサービスもありますが、まだまだ地方自治体によって、できることが異なったりします。

また、地方での仕事の際に、その時の滞在場所からの旅費の根拠などを問われたりしました。制度だけでなく、まだまだマルチハビテーションに対する理解や現実的なハックが必要とされています。


最後に


マルチハビテーションというと、経済的に豊かで、自由な暮らしがしたい人の特権のように思われます。しかし、僕自身の挑戦もふくめて、この連載で扱っていきたいのは、いかに経済的なコストを抑えて、自分らしく新しい暮らし方や働き方を模索するかということです。そのための方法論や経験を通して、多くの人と知恵を共有できればと思います。

新しい時代の持続可能性に対するアクティブな挑戦とでもいうのでしょうか。ネットワーク社会の恩恵を享受した先に、どんな新しい暮らし方や働き方があるのだろうか? そんな模索をしながら、マルチハビテーションを実践的に試みていきたいと思います。

僕自身、今はまだ非効率的でムダも多く、理想な生活スタイルにはなっていませんが、そのあたりのリアルな事情も書いていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

1人でも多くの人が、自分らしい生き方や「好き」を生かした、生き方ができる社会になりますように。


佐々木博/株式会社創庵代表取締役・マルチハビテーター

150502multi_habitation_prof.jpgパソコン・ITのエバンジェリストとして、NHK教育テレビ「趣味悠々」にて12年間番組講師を歴任。シェアする暮らしや働き方によって、コミュニティを活性化し、社会を変える仕組みづくり「シェアリングエコノミー」を研究テーマに、全国の地方自治体において、地域づくり、自立・起業支援教育に尽力。難しい用語やテクノロジーをわかりやすく伝える語り口には定評がある。近著に『AR(拡張現実)で何が変わるのか? (技術評論社))、『日本的ソーシャルメディアの未来』など、40冊近い著書監修書籍を持つ。

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