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印南敦史印南敦史  - ,,,  07:30 AM

元広告マンが「猟師と花火師」に...肩書きを捨てたから見えた、生き方のヒント

元広告マンが「猟師と花火師」に...肩書きを捨てたから見えた、生き方のヒント

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猟師、花火師、ときどき祭り』(大島公司著、PHP研究所)の著者は大学卒業後、広告代理店のダイレクトマーケティング部で働きはじめたのだそうです。しかし...


広告を仕事としている以上、当然ですが、「クライアントの商品やサービスの売り上げをあげる」ということを疑ったらはじまりません。でも、僕にはその疑いようのない前提がものすごく居心地の悪いものに感じられたのです。(中略)システムとしての消費社会を肯定すること、むしろ大きく加速させていることに嫌気がさし、自分の気持ちとの乖離は大きくなる一方でした。(31ページより)


結果的には、入社2年で会社を辞めることに。そして業務の引き継ぎをしていたさなかに東日本大震災が起こり、それがきっかけで運命が大きく開けていくことになります。タイトルにもある「猟師」「花火師」「祭り」という流れにつながっていくわけですが、この3つには共通する部分がないだけに、なにが起こったのかは想像しづらいかもしれません。

そこでトピックを抽出しながら、以後の著者の立ちまわりをご紹介したいと思います。


俺は生きる術を持っている


震災後、「被災地へ行く機会が生まれれば、まずはとにかく行ってみたい」と思っていた著者は、知人から声をかけられたことから、すぐに思いを実現させます。そして宮城県の石巻へ通うようになり、2回目の滞在のときに「いまでも忘れられない出来事」に遭遇することに。

それは、桃浦という漁村にいたときのこと。駐車場から動き出したボランティアバスが門の上に渡されていたロープに気づかず、引っかけたまま走り出してしまったのだそうです。そこで、ほどけて地面に垂れ下がってしまったロープを手にして結びなおそうとすると、静かに近づいてきたのは住民らしき壮年の男性。

彼はひったくるようにロープをとり、慣れた手つきで結び、無言のまま立ち去っていったのだとか。しかも素早く簡単そうに結んだのに、ロープはピシッと張られていたといいます。そのとき著者が味わったのは、「圧倒的な敗北感」。生活に必要な技術として当たり前に身につけてきた、といわんばかりの振る舞いに、生きる力の差を見せつけられたということです。


男性が歩き去る背中からは「生」の緊迫感のようなものも伝わってきました。「助けがなくても自分たちでなんとかする」「俺は生きる術を持っている」(中略)そこには生きようとする者が、自らの生命を維持しようと淡々と立ち向かう姿がありました。(37ページ)


そのリアリティの本質的な部分は、その場に居合わせていない限り実感できないかもしれません。しかし、どうあれこの体験は、著者に大きな衝撃を与えることになったのでした。「"生きる""暮らす"とはどういうことなのか」ということについて考え、そして行動に移すきっかけになったのです。(36ページより)


からだも使ってみよう


かくして、瓦礫の除去をしようというときに行き着いたのは、「頭だけで考えてもわからないから、からだも使ってみよう」という思い。「わからないから、やる。やりながら考える」に舵を切った瞬間だそうで、だからこそ「みんなで力を合わせればなんでもできる」ということを、からだで感じられたわけです。

そして以後も、流されてしまった漁村の集会所をセルフビルドしたり、さまざまな困難を回避しながら、かの地の伝統行事である"暴れ神輿"を復活させて地域を盛り上げるなど、著者の勢いはどんどん加速していきます。

地元の人たちとも交流が深まっていき、「ひと対ひと」がまず基本としてあり、そんななかで、お金ベースの等価ではなく「気持ち」ベースの等価で関係性が成り立っていることを知ったといいます。


このような交換が成り立つ背景には、「信用」や「信頼」といった長い時間をかけて育まれた「人と人とのつながり」があるような気がします。(中略)それらが暖かな人付き合いとともにやってきたおかげで、すんなりと「こんなものもありだな~」と自分のなかに入ってきたのです。(63ページより)


猟師になり、そして花火師に


その後の著者の勢いには、(決して大げさではなく)目を見張るものがあります。「自分の力で生きる」ことについて考えた結果、「自ら鹿や鴨などの鳥獣をとって、捌き、食べるようになりたい」と思い、狩猟免許を取得。地元の猟師さんの人間関係も確立します。

さらには、石巻にある漁村の夏祭りでの打ち上げ花火に感動した結果、花火師になることに。なかなかできない発想です。


計画から準備、本番まで走り切るなかで、疲労、興奮、迷い、喜び、その他いろいろな感情がまざり合って心がパンパン。それが、夜空に打ち上がった花火で浄化されたような気がしたのです。(中略)「こんなに人の心を動かすことができる花火をつくれるのは、めっちゃうらやましい。自分でもつくって、来年は自作の花火を打ち上げたい」(114ページ)


そう感じ、花火会社に連絡をして説得した末に技術を習得し、打ち上げ花火を成功させてしまったのですからたいしたもの。そして次に天然の原料から線香花火をつくりたいと思い立ち、(紆余曲折を経て)それを実現。さらには、そんななかでひとりのフランス人と知り合ったことから、日本の祭りをフランスに持ち込むことになるのです。

それらひとつひとつの出来事は、決して関連性のあるものではありません。むしろ、「たまたま著者の視界のなかにはいったもの」が、それぞれ結びついていったという話。しかし、そこに本書の核があります。

重要なのは、その道筋が決して平坦なものではなかったこと。いとも簡単そうに思えるかもしれませんが、大きなポイントは、ここに行き着くまでの著者が「少し前まで広告マンとして働いていた、普通の29歳」でしかなかったということ。必ずしも特別な才能の持ち主だったわけではないのです。

しかし、震災をきっかけに多くの「知らなかったこと」を知り、それらについて自分で考えて自分で行動してみた結果、本書に描かれているようなストーリーが生まれた。いわば、そこにあるものを読み解くことに、本書を読む意義があるわけです。あらかじめ道ができていなかったとしても、「いま、目の前にあること」をひとつずつクリアしていけば、そこに道はできる。本書は、そんなことを教えてくれます。

日々、時間に追われながら、「仕事とはなにか」「生きるとはどういうことか」と悩んでいる人は決して少なくないでしょう。ですが、そうであるからこそ、ここに描かれている著者の苦悩や葛藤、そして達成感は、必ずなんらかのヒントになると思います。

(印南敦史)

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