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鳥本健太|アートプロデューサー

 - ,,,  07:00 PM

アーティストの共犯者として、都市に新しい表現を仕掛けていく:成り行き任せの海外アート起業記第2回

アーティストの共犯者として、都市に新しい表現を仕掛けていく:成り行き任せの海外アート起業記第2回

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初めてキュレーションの他に、自社名義で作品制作も行った展覧会 "ARTificial Garden" (2014)


前回は私が上海に来て、アートというフィールドで起業するまでのお話をさせていただきましたが、今回は具体的なアーティストとプロジェクトを例に、実際どのような活動をしてきたのか紹介したいと思います。


転機となったアーティストとの出会い


Office339の今の仕事のベースは、Nam HyoJunという1人の若い在日韓国人アーティストとの出会いから始まっています。


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Nam HyoJun


独立したばかりの2006年ころ、仕事の方向性がいまいちつかめず、とりあえずできることを手当たり次第取り組んでいたのですが、その1つに上海のアートフェアの出展コーディネートというのがありました。その関係で日本からのアーティストの募集をしていて、その時にコンタクトを取ってきてくれたのが彼でした。

mixiやメールでやりとりをしていたのですが、送ってくる作品が非常に面白くて、コンセプトもしっかりとしている。作品と文章を見て35歳くらいの男性だと勝手に決め込んでいたのですが、なんだか話がかみ合わず。よくよく聞いてみると、なんとまだ19歳とのこと!

気になって仕方がなかったので、日本へ出張を作り渋谷で初めて会いました。在日韓国人3世で高校まで民族学校に通っていた彼は、大学に進学して初めて日本人の社会を経験しているとのこと。「この前、初めて日本人とマクドナルドに行ったんです」という発言も私にとって新鮮でした。


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『I have a dream』


日本にいながら朝鮮の教育を受け、自身のバックグラウンドとアイデンティティーの矛盾と葛藤、そしてそこから生まれる表現の鋭さが作品から見て取れました。しかも会話がいちいち鋭くて面白い。アートの話だと1日中話し続けられるほど、アイデアに溢れていました。

これは自分が上海で紹介したい、いやしなければならない! と思い、すぐに上海での個展をオファーしました。おそらくこのような形で個展をオファーしたのは、後にも先にも彼だけだったと思います。

といっても、当時私は独立したばかりでギャラリーなんて持ってませんし、展覧会を開くにはどうしたらよいかなど、実務的にまったく無知だったのですが、上海に戻ってから何度か挨拶に行ったことがあったVanguard Galleryという若手のギャラリーに相談。彼の作品とアーティストとしてのおもしろさを何度も語ったところ、そのギャラリーのオーナーも気に入ってくれて、共同で個展の開催を承諾してくれました。

美術に少しでも関わりのある人なら理解いただけるかと思いますが、ほぼ実績のないアーティストが個展を開くのは、貸しギャラリーでアーティスト自身が会場を借りて行う以外よっぽどの事がないと難しいですし、しかも10代で海外のギャラリーですから、相当異例なケースでした。

今考えても、ギャラリー側もよくOKしてくれたなと思います。なにせ、ほぼリスクしかないですからね(笑)。


初めての展覧会


その後約半年間の準備をへて、私自身初めて手がけた展覧会となったNam HyoJunの個展「器 - Vessel」が実現しました。


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『公衆便所』


メインとなった作品は、個展のタイトル「器 - Vessel」ともつながる"公衆便所"という名前のインスタレーションでした。壁から腕が垂れており、男性の性器とも見えるガラスのビンから、床の握りつぶされた缶にラインが伸びているというものです。

それぞれの器と、そこに入ってくるもの、溢れだすもの。日々変わるものと、変わらずたまり続けるもの。そういったものを空間全体で表現しています。


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『公衆便所』


この作品は、展覧会最終日に北京のコレクターに購入いただきました。正直この作品が売れるとは予想していなかったので、ビックリしてどこに飾るのか聞いてみると、家に飾って3歳の娘さんに見てもらいたいと。3歳の娘さんに男性器がモチーフの「公衆便所」という作品ですからね!

相当アヴァンギャルドだな~と思って、軽い気持ちで事情を尋ねてみたんですが、どうやら彼の娘さんには脳に障害があり、今以上の知能の発達が見込めないかもしれないとのこと。彼は家にこの作品を置くことによって、作品を通して「人はそれぞれの器で生きていけばいいんだよ」ということを感じてもらいたいと言うのです。

アートは見る人によって、その価値が大きく変わるものだと言うことを実感した、最初の体験でした。


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『Vogue』


そんなこんなで、実際は今考えるととても荒削りな展覧会だったのですが、作品の販売も含めて予想以上に評価をいただき、なんとか成功裏に終えることが出来ました。

これは本当に小さな成功体験でしたが、「自分自身がアーティストや作品に心から愛着を持って、それをきちんと伝えることができれば、なんとか路は開ける」ということを学んだ、私にとって貴重な経験となりました。


ギャラリーは持たない。少数のアーティストにコミットする


この展覧会以来、Office339は自前のスペースを持たず、少数のアーティストの"マネージメント"を軸とするようになっていきました。パートナーギャラリーやその他の関係者と自由にネットワークを張り協業しながら、アーティストに一番近い位置にいて、一緒に作品や表現、彼ら自身の価値を高めていけるよう働きかける。そのような仕事が、これから重要になってくるのではないかという漠然とした考えがありました。

特にその思いを強くしたのが、アートバブルとその後の状況でした。

本来ならば、アーティスト、ギャラリーや美術館、コレクター、オークション、批評家など、それぞれのプレーヤーがきちんと役割がありバランスがとれているのが理想ですが、バブルの頃はなまじ作品が売れてしまうので、マーケットの影響力が大きすぎて、歪んだ構造になっていました。

表現どうこうではなく、作品の価格の動きに重きが置かれるのです。作品は同じ場所(例えば倉庫)にあるのに、短期間のメールのやり取りだけで作品が売買され、所有者が変わり、そこでお金が生まれる。まるで金融商品のようでした。不健全だし、単純にこのような状況はおもしろくないなと。

また2008年の金融危機のあと、中国のアートバブルも収まって羽振りの良かった人たちも随分消えていきましたが、そんな時期でも元気が良くて、しぶとく生き抜いていたのがやはりアーティストでした。生命力が違うというか、ギャラリーやコレクターは廃業できますが、アーティストは生き方だったりしますので、簡単に辞められませんしね。

そういう業界のプレーヤーたちの勃興と衰退をつぶさに見てきて、やっぱり本質的には作品でもマーケットでもなく、アーティストが一番重要だなと。であれば、アーティストに最も近いポジションで仕事をしようと。

なのでうちの会社は芸術至上主義というより、芸術家至上主義です。やっぱり表現を生み出すアーティストが一番偉い。いや、偉いというかおもしろい。私自身、何よりも作品が生まれる瞬間、新しい表現が生まれる瞬間が一番エキサイティングで楽しいんですね。そういうところに常に身を置いていたいということでもあります。


Office339のプロデュース業務


数名のアーティストをマネージメントをしつつも、それとは別にOffice339としてアートプロジェクトのプロデュースも同時に行っています。

これは、コミットする対象がアーティストなのか、プロジェクトなのかという、方向性の違いあるのですが、どちらもアーティストとその作品(表現)が一番重要な要素となるというところに違いはありません。


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オフィスでのスタッフとの打ち合わせの様子


関わるプロジェクトは本当にさまざまで、企業のブランディングの一環としてアートプロジェクトを依頼されることもありますし、商業施設のパブリックアートの制作をしたり、行政や地方自治体と一緒に仕事をしたりすることもあります。

基本的にはプロジェクトベースとなるため、その企画ごとに適したアーティストを検討します。企画のコンセプトメーキングから、アーティストのリサーチ・検討、交渉、そして実際の制作管理や作品の設置・運営まで行うことがほとんどです。

プロデュース業務はクライアントワークが多く、アーティストを選ぶのも公平な目と判断が必要になるので、自社でマネージメントしているアーティストを無理に押すことはしませんが、コンセプトが合致したりクライアントが気に入った場合は積極的に絡めていきます。


高級百貨店のアートプロデュース


具体例を1つ。香港にLane Crawfordという160年以上の歴史がある百貨店があり、2013年、Lane Crawfordの上海初の大型フラグシップショップの立ち上げのアートプロジェクトに関わりました。


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「MODERN EXPRESSIONS - SHANGHAI」というテーマをもとに、Lance Crawford本社のクリエイティブマネジャーと一緒にアーティストのセレクションや作品の方向性を考えたり、実際の制作の管理をしたり。

ほぼ1年がかりのプロジェクトになりましたが、最終的に5組のアーティストのコーディネーションを行いました。企画の当初から、担当者にNam HyoJunの作品を気に入ってもらい、パブリックスペースに絵画と彫刻をコミッションワークとして制作し、またメンズのVIPルームにも絵画を納めました。


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ただ空いているスペースに装飾として作品を配置するのではなく、店舗設計の段階からアーティストや作品の細かいプランを落とし込んでいけたので、空間と作品がうまく溶け込んだ、商業施設では数少ない成功例となりました。

Lane Crawfordは、中国で乱立する商業施設の中で今も異彩を放っています。


上海の摩天楼をアートに変える


もう1つ、昨年私が手がけたプロジェクトで、最も規模が大きかったものをご紹介します。


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上海環球金融中心(Shanghai World Financial Center、以下SWFC)という、現在オープンしているビルでは中国で一番高い超高層ビルがあるのですが、そのビルの開業5周年企画として「滤镜 FILTER THE PUBLIC」というアートプロジェクトの総合ディレクションをさせていただきました。


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上海を中心に活躍する約60組のアーティストと4組のキュレーター、そして13のリーディングギャラリーに参加してもらい、SWFCの公共スペースをアートで埋め尽くし、上海の金融の中心地から文化発信を図るという非常にチャレンジングなプロジェクトでした。


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トークイベントには、森美術館館長 南條史生氏も参加


約2週間の会期でいくつかのプログラムを実施したのですが、特に反響が大きかったのが、492mのビル全体を覆うLEDを利用した超大型パブリック・アートプロジェクト「SWFC都市光影雕塑(SWFC LED Urban Sculpture Project)」です。

期間中、中国の抽象絵画の第一人者でもある丁乙 Ding Yiや、テクノロジー系アートグループ Greenhouse Coreなど、3組のアーティストにビル全体を使った表現をしてもらい、Nam HyoJunも『万人彩虹』という作品を実施しました。


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『万人彩虹』は、Nam HyoJunの作品である人物のポートレイトが、ビルの壁面に映し出されるというものですが、そのポートレイトのモチーフは一般の方々。期間中ビルに訪れた希望者1万人をブースで撮影し、それをプログラムで彼の作風にデジタルで変換、その作品(参加者のポートレイト)がビルの壁面に12秒だけ映るというものです。


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アンディ・ウォーホルが、「未来には、誰でも15分間は世界的な有名人になれるだろう」と言ったそうなのですが、このプロジェクトでは、参加者にとっておそらく人生で最も巨大な自分のポートレイトがSWFCのビルの壁面に現れ、しかも12秒間だけ上海の夜景の主役になれる、というものでした。


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ビル自体が本当に高いので、角度さえ合えば上海中から見えるんですね。文字通り街の景色をアートで変えることができたプロジェクトとなりました。



異国に根を張る覚悟を持つことで、本当に面白いことが出来る


「2008年の北京オリンピックまで中国にいたら、どこか違う国に行こう」

2004年に中国に来た当初は、そんな風に考えていました。4年もいれば十分だろうと。いろいろな国を転々としながら旅人のように仕事をしていく、というスタイルに憧れていたというのもあります。

当たり前ですが、中国も、アートで仕事をしていくのもそんなに甘くはなかった(笑)。いつの間にか私の中国歴も、もう10年になってしまいました。そして今は日本に帰国しようとも、他の国に行こうとも考えていません。

10年いて気がついたのは、長くいればいるほどできることの幅が広がっていく、というある意味当然のことでした。

「3年で帰ります」というのと、「ずっと上海にいます」という人ではやっぱり言葉の重みも、物事に対する姿勢も違ってきます。そういう覚悟みたいなものがないと、信頼関係が生まれづらい。逆に信頼関係のベースがあれば、立派な実績がなくても思いのほかすんなりとおもしろい仕事が仕掛けられたりする。その辺のリスクの許容度や物事が進むスピードに、中国のスケールの大きさを感じます。


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毎年のように新しい美術館ができたり、美術館に限らずショッピングモールや公園などでも斬新なアート展が開かれたりと、市民がアートに触れる機会も格段に増えていて、それに敏感に反応する若い層がどんどん現れてきています。

しかも、今、表現に触れられる場所は、美術館のようなリアルな空間だけでなく、オンラインにも広がってきました。その無限の電子空間も表現とビジネスの場になってきています。

次回は、オンライン動画という全く新しいジャンルで活動し、いま中国の一部の層で熱狂的な人気を博しているアーティスト山下智博と、彼のプロジェクトを紹介したいと思います。


鳥本健太 KENTA TORIMOTO

1980年生まれ、北海道新得町出身。アートプロデューサー。上海を拠点とするアートマネージメント事務所「Office339」の代表。現代アートを軸に様々な領域を横断し文化的な価値を創造する企画をアジア各地でプロデュースしている。近年のプロジェクトとしては、中国のオタク層に話題沸騰中の連続ドラマ「日本屌丝」のプロデュース、上海環球金融中心5周年記念アートプロジェクト「滤镜 FILTER THE PUBLIC」総合ディレクションなど。

  • ,,,,, - By

    香川博人

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