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松尾仁  - ,,,  09:00 PM

写真家、若木信吾に学ぶ、世の中に残る仕事をする方法。

写真家、若木信吾に学ぶ、世の中に残る仕事をする方法。

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小泉今日子、深津絵里、SMAPをはじめ、多くの著名人から信頼を受けて仕事をする写真家、若木信吾さんは、映画監督、雑誌の発行人、本屋のオーナーと、キャリアを重ねるごとに活動の幅を広げてきました。「よく、いろんなことを同時にできますね?」と言われることもあるそうですが、ご自身の中では経験したことを軸に「自分にもできそうなこと」を積み重ねてきたのだそうです。しかし、その過程には越えるべき壁があり、簡単に実現できることではありません。どうして若木さんは写真家として活躍しながらも、ジャンルを越えて新しい試みを続けることができるのか、お話を伺いました。


「Will Power」の強い人が、やりたい仕事を実現できる。


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若木さんの初監督映画『星影のワルツ』(左)と、NHKスペシャルドラマ『白洲次郎』と連動して作られたフォトブック『白洲正子 TRAVELING DAYS』(若木さんは写真を担当)。


若木:やらないで後悔するより、やって学ぼう」という気持ちが基本にはあります。「Noting to lose」という言葉もあるけれど、初めての分野であれば失敗しても失うものはない。僕にとって最初の挑戦は大学留学でした。小さい頃から写真が好きで、日本よりもアメリカの作品が好きでした。映画も音楽も好きだったのは英語圏の文化。それで、アメリカの大学に行きたいと思ったんです。実現できたのは親や周りの協力があったからだけど、きっと「行きたい」という意思が強かったから、周りが動いてくれたんですよね。海外に行ったことのない両親を説得するために、普段から英会話を習ったり、留学雑誌を読んで願書の書き方を勉強していました。

NYの大学を卒業してカメラマンになるときも、自分の意思を尊重しました。世界中からカメラマンが集まるNYでは、当然、競争も激しい。当時の日本ではアシスタントを経て独立するのが一般的だったみたいだけど、NYでは、実力のある人は卒業してすぐに仕事をしていました。その時に、自分は競争社会の中で生きていこうと決めたんです。留学や仕事を通して「Will Power」というか、やりたい気持ちこそが大事なんだと気付いたんですよね。その学びが、いろんなことを始めるきっかけになっていると思います。


イメージを明確にして、自分のスタイルでモノを作る。


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1996年にアーティスト、マイク・ミンと一緒にアメリカ横断して制作したシリーズ「Let's go for a drive」。1997年にパルコギャラリーで個展開催された。


大学を卒業した若木さんは、親友のアーティスト、マイク・ミンと共に、アメリカを横断しながら作品制作を行いました。若木さんが撮った写真にマイクが絵とリリックをペイントした「Let's go for a drive」のシリーズは、1997年にパルコギャラリーで個展を開催し、スタイリストや編集者、ファッションデザイナーなど、業界の著名人たちが作品を購入したことで知られています。写真家とペインターという2つの異なる視点が1枚の作品に重なって、アメリカの風景とともに社会や思想を感じられる作品です。


若木:やり方はひとつではないから、決まったやり方をするのが嫌いなんですよね。自分なりに思い立って、自分なりに動くのが好きなんです。当時はまだPhotoshopもVer.2.0とかの時代で、「レイヤー」という概念もあまり浸透していませんでした。そんな時代に、同じ風景を見たふたりの視点が、それぞれのレイヤーで重なったら面白いと思ったんです。いつも自分の中では明確なイメージがあって、それを作品にしています。

パルコギャラリーは日本に帰って来ると、よく訪れていた場所でした。高橋恭司さんや、ホンマタカシさん、長島有里枝ちゃんといった写真家たちの展覧会をやっていたから。それで、僕もそこでやりたいと思ったんですよね。会場で「写真を見てください」とお願いしたのを今でも覚えています。「Let's go for a drive」のサービスプリントのサンプルだったかな。担当の方が見てくれて個展の開催が決まったんです。初めての写真集を作ったのも、この作品でした。


経験したことを基礎に、ハードルをひとつ上げる。


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若木さんが、祖父である琢次さんを撮り続けてきたポートレートをまとめた写真集『Takuji』(左)、と、自ら出版社を設立して作った雑誌『Youngtree Press』(右)。


「なりたい自分」や「作りたい作品」のビジョンを明確にして、それに向かって必要なことを積み重ねていくのが若木さんのスタイルです。1999年には、おじいさんのポートレート写真集『Takuji』、マイク・ミンのポートレート写真集『Free for All』と、2冊の写真集を発売。その後も定期的に写真集を出し続け、2004年には自ら出版社を設立、雑誌『Youngtree Press』を発行しました。さらに2007年には『星影のワルツ』で初めての映画監督も経験しています。


若木:当時、祖父のポートレート写真は、いろんな人に見てもらっていました。「いつか写真集にしたいんです」と言っていたから、業界のほとんどの人は知っていたと思います。ずっと撮り続けて作品の枚数が溜まって、そろそろ写真集にしたいと思っていたら光琳社の方がやろうと言ってくれたんです。

マイクのポートレート集『Free for All』は、「Let's go for a drive」と同じ時期に撮っていたもの。この「Free for All」のおかげで文章を書く面白さを知りました。あとがきの原稿を書いたら、編集者や校正者のチェックが入って赤字だらけで戻ってきたんです(笑)。言葉で伝えるって、奥が深いんだなと感じました。それで、写真と文章で伝える雑誌をやってみようと、『Youngtree Press』を発行したんです。すると、雑誌にはストーリーテリングの要素がありますよね。それを膨らませると映画になる。だったら、監督もできるんじゃないかと『星影のワルツ』の脚本を書き始めました。また、出版物を出すと、書店に卸しますよね。営業を通して本屋の人と触れ合う機会ができると、書店の仕組みがわかる。それで、本屋もやってみたいと考えるようになりました。僕がやってきたことは、まっく違うジャンルのように見えるけど、すべて繋がっているんですよね。新しいことのヒントは、経験したものの中に隠れていると思っています。


自分のゴールとは別に、世の中のゴールを理解する。


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若木さんが浜松で営む本屋「BOOKS AND PRINTS」の内観。海外、日本の良質な写真集がセレクトされている。


目の前にある事象と向き合って、その「仕組み」を理解する。そして、それを自分でもやってみる行動力が、若木さんの仕事の幅を広げてきたのだと感じました。そしてここ数年の若木さんの視点は「コミュニティ作り」や「町作り」の分野にまで広がっています。ライフハッカーでは以前にも「浜松で好きを仕事にする人々」の記事を紹介しましたが、2010年に若木さんがオープンした書店「BOOKS AND PRINTS」は、日本や海外の良書を扱うだけでなく、若い世代が営むお店と連携して浜松の町を盛り上げています。


若木:NYやサンフランシスコに住んでいたこともあるし、仕事柄、いろんな都市に行きます。すると、住み心地の良い町と、そうでない町があるんですよね。祖父の写真を撮りに帰郷することが多かったから、自然といろんな都市と浜松を比べていたんだと思います。若い頃は町の環境のことなんて、自分とは関係のない世界だと思っていたけれど、最近は、意外とそうでもないと感じるんですよね。今の浜松には自分よりも若い人たちが生活していてニーズがあるかもしれないなと。自分が若い頃、浜松には海外のいい写真集やアート本を扱う書店がありませんでした。

次の世代のために、そういう本屋があったらいいなと「BOOKS AND PRINTS」をオープンさせたんです。サンフランシスコのシティライツみたいに、カルチャーが生まれる町にはいい本屋がありますから。単に本を売るだけではなく、コミュニティを築ける場所になればいいですね。本屋運営でも基礎にあるのは自分の経験です。例えば僕自身も東京の本屋でトークショーに出演することがありますが、自分が話す内容を考えるよりも、その場の仕組みが気になるんです。お客さんを何人集めてコーヒーを販売したら元がとれるんだな、とか。あるいは、元が取れなくても、お客さんと関係を築くというリターンがあるんだな、と。トークショーで自分が話をするゴールとは別に、世の中の仕組みとしてのゴールがあって、それを理解して自分でもやりたいんです。


10年周期で考えることで、世の中に残るものが完成する。


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若木さんの監督第三作目となる映画『白河夜船』は2015年に公開予定。原作はよしもとばなな、主演は安藤サクラ、井浦新。


ただ、「新しいことを始めると、結果が出るまでに時間がかかるもの」だと若木さんは言います。10年単位で物事を考えることが、世の中に受け入れられるための秘訣のようです。


若木:祖父の写真集は大学生の頃からイメージしていて、卒業5年後に出版したから約8年。映画は脚本が完成してから3年後に撮影、公開までに2年だから、計5年。ライフサイクルとしては5年に1本ぐらいしか、いい作品を作れないんですよね。それで5年先の計画を立てながら、10年単位でモノを作らないと世の中を乗り越えられないと考えるようになったんです。

振り返ってみると、僕はずっと10年単位で物事を進めてきたと感じます。10歳まではまだ子供だからわからないけど、10代後半で自分の意思で留学をした。20歳でカメラマンになる決意をして、写真集を出そうと頑張って実現できた。その時に、10年単位のペースで物事を考えないといけないとわかったんです。写真集を作っていたからだけど、30代になって映画もいいなと思っていたら2本も監督することができた。そして、40代になったら本屋をやりたいと思っていたんです。心の準備ができていたから実現スピードは早かったけど、実は、あまり儲からなかったんですよね(笑)。だから、残りの40代は経営を覚えたいと思っています。

40代に入って震災もあって、いろいろ考えたりもして、改めて、自分も「おじさん」の歳になったと感じます。50代、60代でも活躍している人は、個性を磨き続けてきた人。30代から50代を「集団的なおじさん」と捉えたら、自分はその真ん中の年齢です。社会的な立場や責任が一番パワフルになる時期に、自分がいったい何をするのかと考えたら、個人的な欲望を満たす面白さに飽きてしまったんですよね。そのため、今は、若い人に伝えるとか、グループでやることに興味が出てきました。

今年の夏に、よしもとばななさん原作の映画『白河夜船』を監督したんですけど、そこにもヒントがありました。自分のやりたいイメージがあっても、関わる人と上手にコミュニケーションを取りながら、いかに成功させるかが大事なんですよね。雑誌の発行はお金を貯めて必要な交渉をしたらできたけど、映画やお店はたくさんの人と一緒に作るもの。自分ひとりの限られたモノ作りの魅力よりも、人と作ることの楽しさに気付くってことなのかもしれません。


100%の力を使うのではなく、物事のディテールをよく見る。


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IMA FANd!」で始まった、若木さんのクラウドファンディングのページ。長年撮り続けてきた幼なじみの写真集制作のために支援を募集している。


そして、クラウドファンディングを使った新しい写真集のプロジェクトも、若木さんの新しい試みです。知的障害を持つふたりの親友を撮り続けてきた若木さんが、いつか写真集にしたいと想い続けてきた作品です。


若木:英ちゃん、弘ちゃんのポートレートは、15年間、撮り続けてきた個人的なプロジェクトです。いろんな出版社に写真集の話を持っていっても、断られてきた企画でもあります。何歳になっても売れないものは作らせてもらえないんですよね。モノづくりは自分だけが喜んでいては駄目で、一緒に働くみんなが喜ぶ企画でないといけない。それは、何部刷って、どれぐらい儲けが出るのかということ。一緒に働く人たちは、そのギャラで生活費を払うわけですから。そういう点でクラウドファンディングは、自分が通したい意思と、人々が見たいという思いが、お互いにわかったうえでモノを作れるのが魅力的だと感じました。出版する前から評価してくれる人がいることは自信にもつながりますよね。

今回、ファンドの目標額である50万円は達成しましたが、写真集を作るには最低でも200万円ぐらいの予算がかかります。例えば、予算の都合で大きな判型では出せないとします。こだわりのある人は「できない」と言うかもしれません。ただ、それを「こだわり」という人もいるけれど、その作品にとって一番重要なことが何かを考えるべきだと思うんですよね。もちろん、仕様が重要な場合もあります。でも、今回のプロジェクトにおいては、サイズとか、カバーの材質とか、大事なのは、そういう「格好」の部分ではない。ずっと一緒に生きてきた、英ちゃん、弘ちゃんという人を、写真というメディアに記録して、自分の人生よりも長く見てもらうことが一番大切なんです。

僕は100%の力を注いでモノを作るなんて、言葉のあやだと思っています。生きていくためにはご飯も食べなくてはいけないし、子育てだってある。だから、モノづくりは、人生の中で一緒に歩むもの。全力を出せないかわりに、ディテールを見ることが大事だと思っています。ディテールを見るというのは、わからないことに疑問を持って知ろうとすること。うまくいっている人を観察して、その理由を調べたり考えたりすること。そうやって物事を細分化することで、本質が見えてくるんですよね。


目の前の人を受け入れて、丁寧に向き合う。


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幼なじみの英ちゃんと弘ちゃん。若木さんは15年に渡ってふたりを撮り続けてきた。


若木:カメラマンという仕事は、ピントを合わせてシャッターを押すだけ。でも、単に指を動かしているだけではなくて、頭の中ではいろんなことを考えています。見ているものを理解するために、頭の中で言語化しているんだと思います。それができるようになったから、写真家とは違う仕事もできるようになったのかもしれません。

でも、だからといって、いつも明確な写真を撮るわけではありません。あえて不明確な写真を選ぶこともあります。ひとつのものがあれば、常に相反する何かがあるわけですから、常に選択肢は無限にあるんですよね。それが世の中の物事を複雑にしていて、大切なのは、それをどう理解するか。どのように撮っても失敗ではないし成功でもない。だから、みんなが平等なんです。そのような考え方は、英ちゃん弘ちゃんと付き合っていたから身に付いたのかもしれません。彼らは社会への適応能力は低いけれど同じ人間です。生きるか死ぬかの存在で、死なせてはならない存在。そして、どんなに強い人でも死んだら「0」になってしまう。だから、生きている者はどんなカタチであれ、平等に扱われるべきだと思うんです。


15年間撮り続けてきた英ちゃん、弘ちゃんの写真を、若木さんはアートディレクターの原耕一さんと何年もかけてまとめてきました。英ちゃん、弘ちゃんとは同じ年齢のため、これからも写真を撮り続けていくことができるだろうと思っていたそうですが、英ちゃんが去年、突然の事故で亡くなってしまいました。若木さんは、それを機に写真集にまとめる決意をしたのだと言います。雑誌や広告の撮影であっても、若木さんは、相手に「こうしてください」と言わないのがマナーだと考えているそうです。それは、まず目の前の人を受け入れて、そのうえで素晴らしい表情を撮りたいと思っているからなのかもしれません。


若木:写真家は、被写体があってこそ仕事ができるんですよね。だから僕は、想像の話はしないように心がけています。例えばマリリン・モンローのように撮りたいと言うのは、目の前の人とちゃんと向き合っていないということ。「臨機応変に」と言う人もいるけれど、人と人との向き合い方の話だと思うんですよね。


若木さんが多くの人から信頼を受けるのは、目の前の人や事象と、いつも平等に、丁寧に向き合っているからなのだと感じました。『英ちゃん弘ちゃんの写真集』のクラウドファンディングは目標金額を達成しましたが、若木さんの知り合いの多くも支援してくれたそうです。それはきっと、誠実に世の中と向き合う若木さんのことを知っているからこそ、「Will Power」を応援したくなったのだと思います。ファンドを支援すると、若木さん自身が写真集を制作していく様子を、週に2回、メールで届けてくれます。新たな「Will Power」が、日々、実現に向けて進んで行くのを見ると、学びにもなるし、自分自身もやりたいことを実現しようと思えるので、日々、元気をもらえると思いますよ。若木さんのクラウドファンディングは残り数日と迫ってきたので、よろしければ応援してみてください。


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ファンド支援すると若木さんから送られてくる、活動報告のメール。写真集制作の過程を知ることができる。


若木信吾 Wakagi Shingo

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若木信吾 Shingo Wakagi

1971年静岡県浜松市生まれ。ニューヨーク州ロチェスター工科大学写真課卒業後、『The New York Times Magazine』、『Newsweek』『Switch』『ELLE Japon』、『HF』、『relax』を始め、雑誌・広告・音楽媒体など、 幅広い分野で活躍中。代表作に写真集『Let's go for a drive』、『Takuji』、『Free for All』、映画『星影のワルツ』、『トーテムSong for home』など。また、よしもとばなな原作、安藤サクラ、井浦新が主演する第三弾監督映画『白河夜船』が2015年に公開予定。


(文・聞き手/松尾仁)

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    香川博人

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