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印南敦史  - ,,  07:30 AM

ビジネスシーンでよく見る、注意すべき論法と反撃

ビジネスシーンでよく見る、注意すべき論法と反撃

あたらしい話し方の辞典


日常生活、特にビジネスシーンにおいては、「論理的な話し方」が求められるもの。しかし、純粋に論理だけで会話することは基本的に無理。だから純粋にではなくとも「"比較的"論理的な話し方」を目指すべきだと主張しているのは、『あたらしい話し方の辞典』(高橋健太郎著、日本文芸社)の著者。


そのためには、どんな話し方がどのように話の内容や論理をねじ曲げているのかを認識し、自覚すること。(中略)「論理的ではないものを確認し、それを差し引いて考えることで論理的な会話に近づこうじゃないか」という引き算的な発想本書のコンセプトの一つです。(「はじめに──論理だけじゃやっていけない現実のために」より)


そこで全体を5章に分け、56種類もの話し方を解説しているわけです。きょうは、ビジネスシーンでよく見るような論法を集めたという第3章「要注意!ビジネスに利用される話し方」に焦点を当ててみたいと思います。


すり替え謝罪


クレーム対応の場面において、その内容に対する責任を認めない場合に「ご気分を害されたことについては、お詫び申し上げます」というようなすり替え謝罪がよく使われます。「大人ならば一度は使う機会のあるテクニックなのかもしれません」とは著者の分析。

それはともかく、謝罪のことばには、ふたつの作用があるそうです。「自分の非を認める」メッセージとしての実際的な作用と、相手の気持ちをなだめる情緒的な作用。そして前者を巧妙に避けながら、後者の相手をなだめる作用だけを良いところどりしようというのが、すり替え謝罪だとか。つまり相手が謝らせたいところとは別の部分について謝罪することで、曖昧な解決を図るテクニックであるわけです。

しかしそこで問題となるのが、「何にすり替えるか」ということ。よく使われるのは、「"ご気分を害されたこと"については謝罪します」「"お時間をわざわざいただく結果となり"申し訳ございません」「"誤解を生んだこと"についてはお詫びします」など。「相手が怒っている」「トラブルになっている」という現実について"だけ"謝罪し、その責任の所在については言及しないということ。こうすれば、相手が追求しようとしている責任を明確に認めないかたちで、相手をなだめることができるといいます。

ちなみに本書のおもしろいところは、こうした話し方への「反撃例」も記載されている点です。たとえば、すり替え謝罪への反撃の仕方はこんな感じ。

すり替え謝罪は、ことばの機微を利用して巧妙に責任を認めないというもの。ならば気づかないふりをしてことばの機微を無視し、「相手が認めて謝った」と一方的にザツな解釈をしてしまえばOK。それで相手が弁解をはじめたら、細かい理屈を無視して「でも、謝ったじゃないか!」と反論する。著者によれば、これはマスコミがよく使う方法だそうです。現実的には、なかなか難しそうな気もしますが。(124ページより)


マイナス・プラス法


話す内容にマイナス要素とプラス要素がある場合、プラス要素を後ろにまわすと、印象がよくなるといいます。


「このプードルは非常にかわいいが、ときどき手を噛む」
「このプードルはときどき手を噛むが、非常にかわいい」


たしかに、同じことをいっているのに、なぜか後者のほうがポジティブな印象になっています。これが、「マイナス・プラス法」の力。ことばは、プラス要素とマイナス要素を並べる順序によって、全体の印象が変わってくるわけです。

では、聞く側はどうすればいいのでしょうか? 答えは簡単。並べられる順序にかかわらず、並列的に考えればいいだけのこと。プラス材料で話を締めようとする相手には、意識的にマイナス部分を思い出すようにし、「プラスの印象はマイナス・プラス法によるもの」であることを自覚するようにすればいいのです。

またマイナス・プラス法を使ってくる相手には、前半のマイナス部分を念押しするようにすると効果的だそうです。「たしかに人員は必要ですが、大きな収益が見込めます」という場合なら、「でも人員はかかるんですよね?」といった具合。こうすればマイナス部分について確認することができ、自分のなかで再度マイナスを印象づけなおすことができるため、フェアな判断が可能になるわけです。(128ページより)


列挙法


他人の意見をかさに着て自分の意見を通したいときは、「みんなそういってますよ!」というより「木村さんも越中さんも青柳さんも、高千穂さんだって、そういってるんですよ!」といったほうがボリュームが出て立派な言い分に聞こえるもの。また、具体的な名前を列挙することで、印象もリアルになるといいます。これが「列挙法」。

ポイントは、このように列挙されると、聞く側はその数に圧倒され、ひとりひとりがどんな人間であるかの精査をつい忘れがちになるということだとか。いわば、「質」の視点を見失うということです。

では、聞く側はどう対処すればいいのでしょうか? まず列挙法には質を見失わせる効果があるのですから、意識的にそれを失わない必要があります。「あいつの意見を支持している木村、越中、青柳、高千穂はそれぞれどういう人間か?」などの視点をちゃんと持つように気をつけるということ。たとえば「木村、越中、青柳、高千穂」の部分を、「営業部の意見としては」「成人」などに再変換して考えるといいそうです。

そして反撃の仕方としては、相手よりたくさんの要素を列挙することが効果的だとか。「でも、浜口も寺西も谷津も斉藤も小澤も吉田も、反対だといっていたぞ」というような感じ。もし列挙する事実がないなら、「要は営業部の連中はそう考えてるってことだな」と返すか、相手の列挙した要素のひとつについて、「でも前に越中の出したアイデアは大失敗だったじゃないか。大丈夫なのか?」と揚げ足をとる方法もあるといいます。(140ページより)



以前ご紹介したことのある『スゴ訳 あたらしいカタカナ語辞典』(高橋書店)もそうであったように、著者の書籍のおもしろさは、ギリギリのユーモアとアイロニーがふんだんに散りばめられているところにあります。しかも単に笑いをとろうとしているだけでなく、充分に実用的。だからこそ、さまざまな状況に応用することができるはずです。


(印南敦史)

  • ,,,,, - By

    香川博人

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