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松尾仁  - ,,,,  09:00 PM

最新作『紙の月』が公開中の映画監督、吉田大八の仕事術:その2

最新作『紙の月』が公開中の映画監督、吉田大八の仕事術:その2

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(c)2014「紙の月」製作委員会
映画『紙の月』が第27回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出され、レッドカーペットに登場した吉田監督とキャスト。左から池松壮亮、吉田監督、宮沢りえ。


『桐島、部活やめるってよ』で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した吉田大八監督の新作映画『紙の月』が公開中です。角田光代原作の本作は、バブル崩壊直後の1994年の日本が舞台。平凡な人生を送っていたひとりの主婦が、職場で小さな罪を犯すことから、もはや後戻りできない横領事件を起こしていくストーリーです。見所は、宮沢りえさん演じる主人公の梨花が、偽りの幸せと知りつつも、若き恋人とのひとときのために堕ちていく、その美しさ。


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(c)2014「紙の月」製作委員会
吉田監督の最新作『紙の月』が11月15日に公開された。
角田光代原作、宮沢りえ主演の本作は、第27回東京国際映画祭のコンペティション部門に邦画で唯一選出され、観客賞と最優秀女優賞を受賞した。


CMディレクターが映画で成功するのは難しいと言われる中、どのようにして吉田監督が映画を撮り続けて来たのかは「吉田大八監督の仕事術:その1」で紹介しましたが、2回目の今回は、仕事に対するマインドと、仕事道具について話を伺いました。監督の仕事に対するマインドには、新人時代に言われたある上司の一言が影響しているそうです。


ディレクターをクビにするために、プロデューサーは存在する。


吉田:CM制作会社にまだ入社したばかりの頃に、上司からいきなり「大八、プロデューサーは何のためにいるか分かるか?」と訊かれたことがあります。「予算とスケジュールを管理するためですか」と答えると、「お前をクビにするためにいるんだよ」と言われたんです。プロデューサーがいつでもお前をクビにするから、余計なことを考えずに自分が作りたいものを貫け、という「責任と覚悟」の話でした。

1本1本のクオリティが評価されるディレクターにとっては、クビになること自体より、納品優先で妥協して仕上がりが悪くなった場合のダメージの方が大きいという考え方もある。それはプロダクションにとっても同じこと。仕事の目指すべき方向とディレクターの個性が合わないと判断すれば、クビにすることで助けるのがプロデューサーの役割だと教えてくれたんです。

その言葉のおかげで、まず作りたいものに向かえばいいのだと気持ちが楽になりました。新人にとってはありがたいアドバイスだったと思います。多分、僕はすごく生意気な新人でした。でも、今よりもディレクターの舵取りが期待されていた時代でもありました。今でもプロデューサーに対しては、これ以上お互い傷が深くなる前にクビにして、と思うことはあります。まあ、歳をとって少しずる賢くなって、その辺をうまく宙ぶらりんにする術も多少は学びましたけどね。

ただ、クリエイターが100%思い通りに作ればクリエイティブ、ということは全くありません。たった1人の考えで作られたものは、純度が高いけど限界もあると思います。クライアントがいる仕事には必ず制約があって、その制約があるからこそ、人はいろいろ動こうとする。クライアントのオーダーで別の方向を探したら、結局そっちの方がうまくいったということはザラです。制約の背景には必ず人がいて、その人の思いも、作品をさらに面白くするチャンスだと思っています。道は1つではないってことですね。ただ、気をつけなくていけないのは、妥協した感覚が自分の中に残ると、自分をむしばむということ。僕の場合は、最終的に「この選択がベストだった」と自分に暗示をかけるようにしています。


クライアントのことを考えながら作品にとって一番いいカタチを探る。また、1回目のインタビューでは、「僕の場合は100%自分でコントロールしたいわけではないんだと思う」とも話していた吉田監督。しかし、映画を監督するうえで、どうしても譲れないのがキャスティングなのだと言います。


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(c)2014「紙の月」製作委員会
吉田監督の最新作『紙の月』の撮影現場。
本作には宮沢りえ、池松壮亮、小林聡美、大島優子、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司など、豪華キャストが出演する。


吉田:映画を作るときに、キャスティングが決まってから参加したことは一度もないです。自分から提案することもあるし、候補に何人か会って決めることもある。結局決め手になるのは、誰と誰の組み合わせが面白くなりそうか、という直感です。『紙の月』で主演をお願いした宮沢りえさんは、本当は、あの役を演じるには美人のイメージが強かったかもしれない。でも、だからこそ想像がつかなかった。それが面白いと思ったんです。


では次に、実際に映画の構成や撮影を行う際には何を大切にしているのでしょうか。監督の仕事道具とともに、訊いてみました。


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『紙の月』を撮影するときに、吉田監督が聴いていた音楽リスト。


音楽でイメージを膨らませる。1フレの感覚を映画に持ち込む。

吉田:自分の場合、映画を作る過程でキーになるのは音楽です。構成やコンテを考えるときに、仮想テーマ曲を決めて、繰り返し聴きながら作業します。この曲が似合うような映画にしたい、というイメージをまず持つということです。最終的には全く違うものになる場合がほとんどですが、それはあまり問題ではないんですよね。ある程度イメージが固まったら途中で切り離して、また別の力で進んで行くんです。だからロケットの第一ブースターのような役割です。あとは、音楽プロデューサーにイメージを伝えて、クランクインの前にプレイリストをもらって撮影中に聴いています。


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監督が20年も愛用しているという、タグ・ホイヤーのストップウォッチ。


吉田:最新ガジェットを使いこなすようなタイプではないので、このストップウォッチが僕にとって一番大事な仕事道具かな。修理を繰り返して20年ぐらい使っています。CMの現場で、半秒差とか、1フレーム(1/30秒)の差を感覚的に会得したことは、自分の中で大きな財産だと思っています。その感覚が必要なシーンは長尺の映画にもありますから。映画の現場で「5枚(5フレーム)短く」という指示を出すと、いろんな人が「えっ!?」という顔をするんですけどね。わかる人にはわかる。それが5枚であっても1枚であっても違いますから。自分の演出術は、フレーム単位の判断に助けられてきたし、鍛えられたと言ってもいいかもしれません。ストップウォッチはアナログしか使いません。新人時代に先輩から「デジタルはダメだ」と言われてから、ずっとこれ。デジタルだと頭の中で計算が必要ですけど、アナログだと感覚的につかめるのが良いんです。


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『紙の月』の絵コンテと、フリクションボール。


吉田:別に新しくもないけど、コンテの絵を描くときは「フリクションボール」を使っています。描き直すことも多いので、ずっと鉛筆と消しゴムだったんですけど、この消せるボールペンが出てからは便利で使っています。絵コンテは『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』のときは全部描いたけど、『クヒオ大佐』で6割ぐらいになって、『パーマネント野ばら』、『桐島、部活やめるってよ』と作品を重ねるごとに描く分量は減りました。『紙の月』ではまた少し増えて全体の3割ぐらいかな。

基本的には「割本」と言って、セリフに小さい絵とサイズを描いた台本で撮影を進行しています。ただ、俳優陣にはどう撮るかを全部オープンに話してるつもりなんですけど、あまり伝わってないみたいなんですよね。完成してから「こういう風につながるんだ」と驚かれることも多いです。絵コンテを描くのは、撮影時間が少ないときやカット割りが複雑なときぐらいになったんで、仕方ないのかもしれないですけどね。動線の確認や、ロケセットの使い方を共有するために描いています。


音楽で作品世界のイメージ基準を作り、固まってきたところで、その第一ブースターを切り離す。絵コンテを描く映画監督が少ない中、第1作目では全てのカットを描き、2作目以降は、1作目の経験を踏まえて必要な部分だけを描く。そして、長尺の映画でも、CMで鍛えた1フレームの判断を重要なポイントで発揮する。入念な準備をしたうえで、現場で柔軟にジャッジしていくのが吉田監督のスタイルです。前回のインタビューで話していた「周りからどういう入力があるかによって、出方を決める」ことができるのは、必要な経験を積み、しっかりと準備をしているからなのだと感じました。そしてそのジャッジは、仕事人生を決めるポイントでも的確に行れていました。


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吉田:実は以前、ディレクターズカンパニーを作らないかという話もあったんです。誰か好きなクリエイターを誘ってやってみないかと。でも、経営に責任を持つ自分がどうしても想像できなくて。ディレクターの名前で取った仕事では、さっきした話と違って、プロデューサーはそのディレクターをクビにできなくなってしまう。だから、難しい。


CM監督として活躍してきた監督が映画にチャレンジすることも、経営者の道を選ぶことも、どちらも人生におけるターニングポイント。それが訪れた際に、自分が将来どこに向かうべきなのかを明確にしてジャッジすることも大切な仕事術のようです。吉田監督が、経営者としてではなく、ディレクターとして生きることを選んだように。そんな監督に、20代、30代の若い世代についてどう思うかを訊いてみました。


吉田:僕はいつも若手に脅威を感じているんですよね。それは、自分自身が若い頃、年上のことをあまり意識していなかったから。自分の方がセンスも能力もあって、ただちょっと経験が足りないだけと思っていました。今の若い人も一見謙虚だけど、実はあんまり変わらない気がします。その自信はやっぱり怖い。だけど、今の自分を鍛えてくれるのもその恐怖なんです。

仕事って、あるクオリティにまで達しないと終わらないことを学ぶ場ですよね。「ココで諦めたら終わりだぞ」という風に。若い頃は特に、厳しい環境で仕事をすることが大事だと感じます。例えば厳しい人と仕事をすれば当然鍛えられますよね。「無理です」と泣きが入るタイミングに、明らかに差が出る。「え、それでOKなの?」なんて、逆にこっちがあおられるくらい。求める次元が高い人と仕事をすることで、自分の基準を上げることが大切だと思います。


若い頃から、自分の視点でクオリティを高め、大きな現場を経験することで、人は成長する。そしてその先に、いくつかのターニングポイントを迎えるのだと思います。吉田監督の仕事術からは、日々の仕事との向き合い方とともに、人生のマップの描き方のヒントをもらえるのではないでしょうか。


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(c)2014「紙の月」製作委員会


紙の月

日本アカデミー賞受賞作『桐島、部活やめるってよ』以来となる、吉田大八監督映画。角田光代のベストセラー原作で、バブル崩壊直後の1994年を舞台に、平凡な人生を送っていたひとりの主婦が、小さな罪を犯すことから、もはや後戻りできない横領事件を起こすところまで堕ちて行くストーリー。7年振りの映画主演となる宮沢りえが、「見たことのない自分の顔があって衝撃でした」と言う名演に期待。11月15日全国ロードショー。


吉田大八

映画監督、CMディレクター。1963年生まれ。1987年に映像制作会社TYOに入社。数々のTV-CMを演出するとともに、2007年公開映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で映画監督デビュー。2012年公開の『桐島、部活やめるってよ』で、日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞。2014年11月15日より『紙の月』が全国公開中。


(文・聞き手/松尾仁)

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