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長谷川賢人  - ,,,,  06:00 PM

「なんか面白くない」と言われた人へ贈る「愛されて、面白い」企画術~コピーライター・小西利行インタビュー(後編)

「なんか面白くない」と言われた人へ贈る「愛されて、面白い」企画術~コピーライター・小西利行インタビュー(後編)

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「アイデアが湧く会議」や「企画の生み出し方」をまとめたインタビュー前編『「考えているのに出てこない」と悩む人によく効くアイデア発想法』はこちらより。後編では「面白い企画/愛されるブランドの作り方」や「アイデア出しに使えるツール」をテーマにお送りします。


小西利行(こにし・としゆき)
POOL inc.ファウンダー。クリエイティブ・ディレクション、コピーライティング、WEB&インタラクティブコミュニケーション開発、また、都市開発や施設開発も手がける。主な受賞歴:CLIO 、ニューヨークADC、ONE SHOW、TCC賞、ACC賞など多数。TCC審査員、宣伝会議賞審査員、エンジン01 文化戦略会議メンバー。

大垣裕美(おおがき・ひろみ)
インタラクティブエージェンシーspiceboxを経てPOOL inc.参加。WEB&インタラクティブ企画を中心にキャンペーン開発を担当。サブカルチャー、新技術系領域を得意とする。


企画は逸脱しているくらいで、やっと「普通」になる


140916pool_interview_11.jpgはなまるうどん エイプリルフール「西ノ島新島 出店記念『マグマあんかけうどん』」サイト
ECD:小西利行、是永聡 CD:小林麻衣子 PL:滝瀬玲子、大垣裕美、山中啓司、井上佳那子 AD:宮内賢治
C:竹田芳幸 映像Dir:鈴木大介 Production:TOW CO.LTD.、1→10Design,inc.
Agency:butterfly・stroke inc.、POOL inc.


── 私がPOOL.incさんのお仕事を知るきっかけにもなったのは、はなまるうどんのエイプリルフール企画でした。「マグマあんかけうどん」という架空の商品をつくって写真で見せることはできても、うどんが器ごと本物の溶岩に飲まれていく映像までちゃんと撮影するのは、素直に感動しました。他にもはなまるうどんはウェブのプロモーションにおいて、アイドルやスポーツ選手がいかにうどんをおいしくすすれるかをスーパースローで撮影して競い合う「はなまるうどん UDNススリンカップ2014」や、子連れだと割り引きになる「生こどもクーポン」など、いつもエッジが立っていると思います。はなまるうどんは次になにをやるんだろうっていうワクワク感があります。

大垣:そのプレッシャーに「うう...」と胃を押さえつつ、「今年は突き抜けてるかなぁ、抜けてないかなぁ」って、日々それに怯えながらがんばっています(笑)。

小西:他とはちがう道をいかないといけないから、大変なんだよね。ただ、あれもやるところまでやっているから面白いんですよ。やりきったなと思えるギリギリを目指してる。はなまるのキャンペーンはクリエイティブ・ディレクターの小林と是永が担当して動かしてるんですが、彼らの「絶対やりきってやる!」「なんとか面白くしてみせる!」という意気込みは、そりゃもうすごくて(笑)。でもその熱量が、実際の「盛り上がり」につながってるんだと思いますね。

大垣:そうですね。「UDNススリンカップ2014」でも、撮影の撮り直しはあまりしなかったのですが、編集はギリギリまで細かく粘りました。「うどんのここにちょっとだけ泡が出てるんで他のカットを...」みたいに(笑)。

小西:作り手の熱量って伝わるんで、やりきるというのは大事です。ダイオウイカ天のときも、いらないカットまで撮影しましたし。ダイオウイカ天は成果物としてはウェブページ2枚しか作っていないけれど、めちゃくちゃPR効果がでて、数億円くらいの広告価値が出たという調査があったみたいですよ。それを、実際はずっと少ない費用で作っていたわけです。

── まさに「やりきった感」ですね。ただ、内容も費用も、どこまで突っ込んでできるかのバランスは難しそうです。

小西:そのバランスを取るのは難しいですね。でも、バランスは最後に取れればいいと思っています。どこまでいったら怒られるのか、そのギリギリを狙っていくんです。たいがい打ち合わせで「これはやりすぎでしょう」と言ったものは、世の中に出ると「普通」くらいになるんです、ぜったい

はなまるうどんで以前にやった「生こどもクーポン」なんて、子どもをクーポン化するだけでも相当怒られるのに、それが来店してくれる大切なお客様で、その家族に向かって「あなたの子どもはクーポンだよ!」と言ってるのと一緒だから(笑)。怒られそうな予感はたしかにあるんですけど、そこまでやらないと世の中が「すげーな」って反応しないので、そこはギリギリを計算するんですね。


140916pool_interview_13.jpgはなまるうどん「生こどもクーポン」キャンペーン
ECD:小西利行、是永聡 CD:小林麻衣子 AD:宮内賢治 PL:滝瀬玲子、大垣裕美、竹田芳幸 I:あべたみお
Production:1→10Design,inc. Agency:butterfly・stroke inc.、POOL inc.


大垣:同じことを「家族割り」とか「子ども割り引き」とするとあまりに普通ですよね。はなまるうどんさんの場合は、テレビCMはおろか、雑誌やウェブのバナー、リスティングまで広告を一切打っていない状態で、そのくらい何もやらない時に、ウェブ媒体で記事にしてもらったりTwitterで話題になったりすることを考えると、その140文字の中に、リツイートしようって思えることや、「生ってwww」って突っ込んでもらえる仕掛けを入れないといけなかったんです。

小西:僕が発売時から担当しているサントリーの「伊右衛門」も、いまは普通の名前に聞こえますが、当時はお茶の商品名としてはすごい突飛だったわけです。ものすごい気合いを入れてつくられた本気の商品だけど、名前に「茶」とも入ってないし、人名だし。世に出たら「変だ」と思われるんじゃないかとみんなで言ってたのに、店頭にならんだ瞬間に、おばちゃんとかは「伊右衛門ください」って手にしていて、「あぁ、普通なんだ」と。僕らがすごい心配するくらいのレベルって、世の中からすると普通で。だからちょっと、そこそこ逸脱していないといけないなっていうのはポリシーですね。やりすぎなくらいで、ようやく世の中も反応してくれる。


ギリギリで面白いことをする条件は「人を傷つけない」


── 言葉1つ、ネーミング1つで本当にリアクションは変わるんですね。さきほど「ギリギリ感を計算する」という話がありました。ただ、自分たちの考えたものが「ギリギリ感」に収まっているかどうか、判断基準はどうすればよいのでしょう。

大垣:徹底的に想像すること、ですかね。前に小西さんが言っていていいなと感じたのは「人を傷つけない」という基準。深く考えれば傷つく人もいるかもしれないですけど、基本的に「Disる」ようなことはしたくないなと思って。たとえば、「生こどもクーポン」のときは、はなまるうどんの担当者さんのお子さんに聞いてみてもらったりしたんですよ。「○○ちゃんはクーポンになったらいや?」みたいな(笑)。そうしたら「ううん、別にボク、一緒に行くよ!」なんて言ってもらったから、たぶん大丈夫です!って。

小西:面白さを追求していくときに人を傷つけないというのは絶対的な条件です。ジャンルは何でも、人を傷つけて面白いものって、絶対に長続きしない。すぐ廃れちゃうし、終わっちゃう。僕らの会社のポリシーは「絶対に人を傷つけない。でも、人を傷つけないのであれば、どこまでも面白いことをやって構わない」ということです。そうすれば、面白いものを見て、人は幸せになれますしね。

大垣:最近、TwitterやFacebookでも、ほんのちょっと上から目線で「この企画はマーケティングの人が怒られそうだよね」とか「クレームの電話が何本行くんだろうね」なんてコメントから炎上することがあるんですけど、じゃあその人は傷ついているかというと、そうじゃない。コメントする人は「いる」と認識しながらも、言われた本人たちや受け取った人たちが「嫌だ!」とならないかどうかをすごく考えます。

小西:ここは本当にせめぎあいで、「新しい」とか「面白い」とかってことをやろうとすると、絶対に逸脱したものじゃないとダメなんです。逸脱するっていうのは「今までのやり方とはちがう」っていうことで、だからこそ面白いんですけど、今までのやり方から変えるとクレームを入れてくる人がいるんですよ、絶対。でもその時に、クレームを恐れるよりも、それを超えないと仕方がない。しつこいようだけど、仮に傷つく人が、この企画によってどこがどう傷つくんだろうというのを徹底的に想像すると、「だいたいこのへんじゃないか」というのが見えてくるんですね。どこからクレームがくるかも同時に考えるけど、「今までと違うじゃないか」「おかしいじゃないか」というクレームはある程度許容しないと本当に面白いことはできないので、そこは受ける。ただ、人が傷つかない範囲で、非常識は大切にする。そこを常に意識してやるっていうことですよね。


愛されるブランドを育てるには「共犯関係」があってこそ



── クレームがくるという観点でこれまでのお仕事を見ると、改札の前にいる男女たちが肌着に変わっていくという、POOL.incが手がけられたイオンの肌着「PEACE FIT」のテレビCMは反応が大きそうです。

小西:あれはいちおう理にかなってるんですよ(笑)。だって、インナーの広告で、後発のブランドだから「インナーが映ってて、映像的にかっこ良く、驚かないといけない」だから、全員インナー着て並んでいるんです。おかしな状況だとは思うんですけど、イオンに機能性インナーが売っていることがまだ知られていないから、まずは見た人にショックを与えないといけない。「イオンはダサい」と思っているような若い人たちにも騒がれないといけない。そうやって考えた時に、あれぐらい斬新なことをやらないとだめなんですって説得して、イオンさんにも理解してもらいました。

もちろん、「エロい」だとか「破廉恥」だとかって、クレームはきた。でも、イオンさんの中でも検討をされて、「ちっとも恥ずかしくない、エロくない」とトップの方が言ってくださってGOサインが出たんです。すごいですよね。あの映像見て、大丈夫って言うんだから、キモが座ってます。でも、そうなんです。裸じゃないからエロくはないものですし、あれを見ても、誰も傷つきはしないはずですよね。みんな、見たことがないから、何か言いたいんですよね。

大垣:うちの会社はクライアントさんがいて、その先に業務があるので、企画を考えている段階で「何を言われるか」「どこがネックになるか」も想像した上で、リスクはまずお伝えするようにしています。隠して言わない、ということはしない。

── クライアントとリスクを共有した上で話し合って、企画を組み立てていくのですね。

大垣:それで、彼らの企業として納得がいくもので、面白いものを作っていく、という感じです。

小西:やっぱり、僕らは広告や映像をつくっていくプロだから、制作するときにだいたいのことが想像つくんです。得意先の担当者やえらい人から、僕らはすごく信じてもらっているわけだから、やろうと思えばむちゃくちゃやって、クレームがバーっと入っても、どんなにひどいことになっても、「とにかく面白いものをつくった!」という逃げ方もできるんです。僕はそういうのを「やり逃げ」と呼んでいますけど、それは絶対にだめ。だから、これをやるのは絶対的に必要でやるべきだ、と信念を持ってるけど、「新しくてショッキングだから、クレームはこういう形でくると思います。それはこういうカタチで答えればいいと思います。それで耐えられますか」っていう話をクライアントには先にする。それは話題になるための代償だから、ある程度までは許容してもらうことを約束してから、みんなでがんばろうってガッ!と動く。

── 安全ラインを決めておきつつ、建ぺい率ギリギリまで家を建てるみたいなイメージを受けました(笑)。

小西:建ぺい率でたとえるなら、一回はみ出てみるっていうのも、考えとしてアリです。そうやって考えれば、「これはたぶん行政に怒られますね」とかもわかるし、「目の錯覚とかで怒られないようにする方法はないか」なんていうのも考えられる。だめなのかと思いきや、ぎりぎりまで建てて、頭上だけちょっとだけはみ出てるけど許されるのかな?っていうことをやっている感じ(笑)。

だいたい、新しいことやパフォーマンスをはじめようとすると、みんなやったことがないことに関してはすごい怖がるものなんです。はなまるうどんのキャンペーンで言うと「街中でレタスを配る」というだけでも、「なんでここでレタス配るの...」なんて怒られるわけですよ。人にレタスを配るだけですよ。レタスは悪いもんじゃないし、ぶん投げて渡すってわけでもないからいいじゃんって思うのに、怒る人は怒るんですよね。でも、ちゃんと説明すれば、ちゃんと超えられるという。


140916pool_interview_14.jpgはなまるうどん「はなまる健康宣言プロモーション」での「レタスまるごと1個配布」サンプリングイベント


大垣:幸いに、POOL.incのクライアントは覚悟のある良い方たちが多いというか、一緒に考えてくれる方たちが多いというか。プロジェクトとして進んでいくので、一緒に考えていかないと良いものはできないと思うんです。

小西:広告をつくって、1回きりで終わることはないから。クライアントとのお付き合いが長いっていうのも、うちの会社の特長なんです。はなまるうどんは6~7年ぐらいで、伊右衛門も11年だし、ザ・プレミアム・モルツも10年。他でもだいたい数年間はやる、間違いなく。そのときに「一緒にでかくなっていきましょう」っていうか、そのブランドが大きくなっていけばいいっていうことを考えるので、ただ面白いっていうことだけだと、やっぱり長続きしないんですよ。そういう風に考える人たちも世の中にはいるんだけど。

── クライアントとある種の「共犯関係」を築きながら、大きくしていくんですね。

小西:世の中に対してそのブランドを押し上げていく方法をいくつも考えて、「でも、これがいまベストなんじゃないの?」という風なことをやるんだけど、頭でっかちにやるとつまらないので、面白くやるってことですね。「面白いことは俺たちに任せておけ! ただ、この方向で間違っていないかだけはみんなで考えよう」っていう感じですかね。

特に最近は、TwitterやFacebookがでてきてから、LINEとかも含めて、「面白いんだけど、なんかこれイヤなんだよね」っていうものって駆逐されるでしょ、いつの間にか。やっぱりそのブランドに対して愛情があって、絶対に人を傷つけないという意識があって作っているものって、なかなか人は悪く言えないんだと思う。「異常に面白いし、バカじゃんこいつら!」は書けるけど、「悪い」とは書けない。それって、つまりロングランするということなので、この時代はそれを本当に強く意識しないと。やっぱり人の道から外れると、企画も外れちゃうんだよね。

── 「愛されるブランドや商品の作り方」としても、いちばんに本当は考えなくてはならないことなのでしょうか。

小西:そうですね。はなまるうどんをやっていて、あれだけとんでもないことが連発していても、なんとなく世の中から愛されているのがわかりますしね(笑)。


頭の中にはいつだって飲み屋のテーブルが浮かんでいる


小西:企画を作るときにハードルを設けるのもいいですよ。僕は「愛されて、面白い」がハードルで。だいたい、人に愛されるものというのはオーソドックスで、世の中に驚きをもって迎え入れられるものはちょっと人から嫌がられたり、「ん?」って思わせたりするものって印象があるんですけど、それでも「絶対的に愛されるもので、跳ねるもの」は作れるんです。愛されるけど面白くて、ドバーン!って飛んで行くものって絶対に作れる。どんなジャンルでも、どんな商品でも、どんな状況でも作れる。

まずは世の中やターゲットに愛されるというスタンスを作りつつ、でも普通のコトだとクソつまらないから、そこからどうやって爆発するかっていうのを想像していく。それで、受け手がものすごく願っていることを見事な形で伝えてあげれば、そういう人たちは「これだよ!」っていう風にして反応してくれる。それって愛されて、情報が跳ねている状態ですよね。その状態にするために「愛されて、面白い」をハードルとして設けたら、それを超えてないとダメってことになる。つまりそのハードルを超えたらいいってこと。その方向で、みんなで一生懸命に考えて「これスゲーっ」て思えるものは、絶対愛されるものになりますから、世の中に伝わっていくんですよね。

── 最初にお聞きした「会議の名前付け」にも通ずる話ですね。同じビジョンやテーマを共有して、あとは各々のアイデアや個人のクリエイティブによって、出てくるものが変わってくる。

小西:「愛されて、面白い」の言葉違いなんですけど、昔から2つの疑問を思い描くようにしているんです。「それは相手は求めているか?」というのと、「それは相手が話題にするか?」という2点を、常に自分の企画を選ぶ時と作る時のベースにしています。「それは相手は求めているか?」は「愛される」で、「それは相手が話題にするか?」は「面白いから誰かに話すか」。

── 後者の「誰か」はどういった人を想定していますか?

小西:自分の周りにいる人が近いかな。よくクライアントに言うのは、その広告でも文章でも言葉でも何でもいいんだけど、「飲み屋の話題になるか」ってのがハードルですよ...と(笑)。飲み屋って、くだらないことを言っていても、面白いことでなければだめでしょう。だから、たとえ企業のものすごく真面目なインナーキャンペーンであっても、「こんなことをうちの会社はやってるんだ、面白いな!」って飲み屋で語られていればいいんですよ。

だから僕の頭の中には常に、しょぼくれた居酒屋のテーブルで女の子や男の子が集まっていて、同期でも同僚でも知り合いが集まったときでもいいんですけど、そこに話題としてポンって出た時に「見た見た!あれ面白いよね!」って言われるか、どうか。知らない人が「え、なになに?」って突っ込んでくるかを想像しながらやってます。飲み屋の話題になるかは、重要。


アイデアに詰まったらEvernoteの「面白いもの」タグを見る


140916pool_interview_6.jpgPOOL.incのウェブサイトで、シーズンごとにローテーションが変わる動画はいつもユニーク。


── 最後に、お二人の仕事術を教えていただけますか。アイデアを生むときや企画を出すときに、意識してやっていることや、なくてはならない道具はありますか。

大垣:いまはA4のコピー用紙と書きやすいペン、あと『Evernote』。コピー用紙は真っ白な、なんてことのないものです。Evenoteは他の事例のストックをひたすらしておくんです。ブログなんかにしちゃうと、人に見られる意識が働いて、言葉なんかを書き始めたり、タイトルを考えちゃったりするので、やらないんですよ。Evernoteだったらエクステンションを使って、右クリックでとりあえず入れておける。

── ウェブでの記事やプロモーションはもちろんですが、紙の資料も入ってきますか?

大垣:私は入ってこないですね。ストックはウェブ上で流行っているものや、電車で思いついた言葉ですかね。普段はそれらを見返したりはしないんですが、企画を出すときに見返します。行き詰まるな、だめだなというときにひたすら見たり、昔の企画をもう一度見たりとか。タグをある程度は付けていますが、それも付けはじめるときりがなくなるんで、「若者」「ウェブ住人」みたいなターゲット、テクノロジー、映像、ウェブなど、広告のジャンルによって仕分けています。

── そうして集めてきたものを、どのように使いますか?

大垣:私はコピー用紙にマインドマップみたいにして書いて、つなげていきますね。

── 小西さんはいかがですか?

小西:若い頃はパソコンなんかもなかったし、資料をタグ付けして仕分けてがんばっていたんですが、おっさんになったんでそういうがんばりも無理になりまして(笑)。いまは僕もよくEvernoteを使ってるんですが、この間、自分の好きな映像や企画、ビジュアルやコンテンツ、メモしてることとかを大きく分けたんですよ。「面白いもの」と「さほど面白くないもの」って。もうね、他の人たちにはできないと思うんですけど、行き当たりばったりっていうのにしてあるんですよ。

大垣:あぁ、セレンディピティをあげるみたいなことですね。

小西:企画を作っていて、何にしようかな、どんな映像にしようって思ったら、タグとかもよくわからないぐらいで分けている中を、たまたまポンポンと開いていって「おー」って出合っていく。とにかく、少なくとも自分があるハードルにおいて「面白い」と思うものだけを集めているというか。そこにアプローチするときは、なんとなく企画と接点があるような感じっていうところにはしようとしています。

僕は割と他の人たちよりも記憶力がいいほうだと思ってるんですよ。でも、記憶力がいいだけで、発想力はそんなにないと思ってて、だから自分がこの企画に必要だと思う映像があったら、そこそこ思い出そうとすれば思い出せるんですよ。ただ、「ああいうのがいいな」って思えない時もあって、そういうときに、面白いけど、ぜんぜん企画とちがうじゃんっていうやつをパカパカ開いていると、ピッ!と行き当たる時があるんですよね。

そんな話をある脳科学者の人にしたら、「それは脳の中でアイデアが生まれる瞬間とまったく同じですよ」と言われました。知識と知識が別々にあって、それらがポンって当たってつながった瞬間に火花が散る。ぜんぜん違うものとぜんぜん違うもの、できればいちばん遠くと遠くがぶつかったら、すごい面白いアイデアになるのですって言われた瞬間に、あぁ、俺のこのぐうたらなやり方は正しかったんだと(笑)。

大垣:「面白いもの」ってタグいいですね。私もタグ付けるのに疲れてきてるんで...。

小西:タグ、疲れるでしょ、でもその「面白いもの」タグ付けでやる場合、理屈がないのに耐えるのを心しておかないといけない。面白いものの集合体であるから、たまたま出合わないとだめだし、ぜんぶ観ることはできないんです。開いたときに「はははは! 面白いけど、まるで関係なかったな...」とか思うのでもいいし、そう思わないとだめですね。


朝はいつでも「同じ2曲からはじまるプレイリスト」で


小西:あと、ものを考えるときのクセとしてやっていることがあって、音楽を聴くんですけど、毎朝、絶対に同じものを聴くんです。少し前までは『戦場のメリークリスマス』。僕は結構、朝早く起きて仕事するんだけど、すごい眠いなって思いつつ、ヘッドホンをつける。1曲目がピアノ・ソロで、2曲目がオーケストラ版の『戦場のメリークリスマス』を流してから、他の曲が流れてくる1個のフォルダがあって、それをずっと聴く。

それって「スイッチを入れる」「モードを入れる」ということですね。最近は渋谷慶一郎くんと親しくしてるのもあって、最初の2曲を『戦場のメリークリスマス』から渋谷くんの曲にしているんですよ。R&Bとかいろいろ試してみたのだけど、やっぱりなんとなくピアノ曲やオーケストラが合っているみたいで。

── いつ、いかなるときでも頭の状態を同じにするという工夫ですね。

小西:酒を飲んで、あぁ、だめだ、朝になっちゃってるよ、でも考えなくちゃいけない...という時でも、曲をかけてみると、企画書を書き始めるっていうモードになるっていうのを無理やりやってます。

大垣:私は真逆ですね。音楽はテンションでぜんぶ変えちゃうんですよ。だから1つの企画をやっていて発想に詰まると、ぜんぜんちがう曲を聴き始めるんです。私がよくやるのは、真面目なものをやるときはモーツアルトを聞いて、それが終わって眠くなってきたりとか、まったりしてきちゃったら、アニソンを聞き始めるんです。神曲ぞろいのアニソンゾーンがあって、すごいノリながら(笑)。

小西:あぁ、気持ちはわかる。同じことなんだけど、俺の場合は、音楽を聴くっていうことにプラスアルファして、同じものからはじまるっていうことに心の安定を求めているらしい。よく仕事をしてる森本千絵さんは、ある仕事が始まる時に、最初に20曲ぐらいのプレイリストを作るんですよ。「この仕事の曲」っていうリストで上がってきてて、「小西さん、今回はこれ作りましたー」なんて言われてもらって、聞いてみると「そういうイメージなのか!」みたいな。それを聞きながら、企画をやったり絵を書いたりしているんですよ。音楽と企画がものすごい連動するから、千絵さんのそのやり方もいいんだよね。仕事ごとにマインドをチェンジできるから。


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今回のインタビューでは、主に小西さんや大垣さんがいかにして企画や広告、そしてコミュニケーションをどのように捉えているかを伺えたと思います。第一線で活躍するクリエイターの思考すべてをトレースすることはできずとも、インタビュー前編でも語られていたように、この記事で自分の心に引っかかった言葉や考えを深堀りすれば、なぜそう感じたかのピュアな理由が見えてくるはず。あとはその理由を、自らの仕事に当てはめてみれば、業種はちがっても、きっとこれまでとは異なる進め方ができることでしょう。

より具体的なアイデア発想術やノウハウは、小西さんが20年に渡る試行錯誤を経て作り上げた「伝わる言葉のメソッド」をまとめた著書『伝わっているか?』でもたっぷりと語られています。そのメソッドは、小西さんが言うところの「愛されて、面白い」ことを考えるのに役立つはずです。


僕は本書を通して、人を幸せにする言葉の技術がみなさんに伝わればいいなと思っています。「人を思い通りに動かしてやろう」という姑息な技術ではなく、幸せなコミュニケーションを生む技術です。本書を通じて、少しでも、世の中に気持ちの良いコミュニケーションが増えることを願っています。
──『伝わっているか?』(小西利行著、宣伝会議、246ページ)


POOL inc.

(文・聞き手/長谷川賢人)

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    香川博人

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